用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~

第四章

 エレインの作った製品は、まずは教会などに配られ、金銭的理由で医者にかかれない貧しい人たちのために使われている。
 その効果を実感した人たちから、エレインのハーブの素晴らしさが広く知れ渡るまでに時間はかからなかった。
 そして、より効率的に多くの人のためになれるよう、エレインは教会に話を聞きに行きたいと申し出る。
 今日は、城下で一番大きい教会にアランと訪問する日だった。
 しかし、出がけに問題が起こる。
「やぁあやああぁぁぁ!」
 いつものお仕着せでないドレスに着替えたエレインが、テオに出かけると伝えるやいなや泣き出し、しがみついて離れなくなった。
「テオドールさま、今日はこのニコルがずっと一緒にいますよ~? 見てくださ~い、可愛いくまのぬいぐるみですよ~」
「やや! やや! ややああぁぁぁ~!」
 ニコルが一生懸命テオの気を逸らそうと試みるも全敗で、手の施しようがない。
「どうしましょう……」
「一体どうしたんだ?」
「殿下、それが……」
 時間になってもエレインが来ないため、様子を見に来たアランが顔を覗かせる。
 泣いてエレインにしがみつくテオを見ると、「あぁ……」と眉尻を下げた。
「テオのことまで気が回らなかったな」
(そうよね、一月以上もずっと一緒にいたから……)
 離れると言っても、ハーブ園に行くときくらいで、最近はそれすらも一緒について来るなど、片時も離れない徹底ぶりだったのだ。
 エレインが城を出るとなれば、こうなることは容易に想像できたはず。
「殿下、テオドールさまも一緒に、というのは無理でしょうか?」
 王族の、しかもまだ子どものテオを外に連れ出すのは厳しいだろう。本当ならエレインが教会を断念するのが一番なのだが、もしかするとこれはよい機会なのかもしれないと思ったエレインは、無茶を承知でそう願い出る。
「テオを?」
「はい。王宮を出て、普段とは違う空気を体験するのも、気晴らしになるかもしれません」
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