妖精渉る夕星に〜真摯な愛を秘めた外科医は、再会した絵本作家を逃さない〜
6 誤解の解き方
病院を出てから無言で歩き続け、駅ではない方向へと進んでいく。花梨は何も言わずに彼について行くが、さすがに不安を覚え始め、住宅街の中に入ったところでようやく口を開いた。
「菱川くん……あの、今ってどこに向かってるの……?」
食事の約束をしたからこうしてついてきているが、先ほどの出来事について何も説明がなく、事情がわからず困惑する。
しかしそう尋ねても北斗からの返答はなく、花梨が俯いて小さなため息をついた時だった。突然北斗の足が止まり、振り返った北斗は申し訳なさそうに微笑んだ。
「黙って連れてきてごめん。実はこの店を予約していたんだ」
二人の目の前には、まるでパリの邸宅を思わせる可愛らしい一軒家が建っており、玄関先の看板には『Bistro Soleil』と書かれていた。
しかし、お店を前にした花梨は青ざめた顔で北斗を見つめる。
「予約って……すごく高そうなお店だよ!」
「今日は俺が誘ったから、そういうことは気にしなくて大丈夫」
「むしろそっちの方が気になっちゃうよ……」
「いいからいいから。それにこの店、友だちのお父さんが経営しているんだ。息子の方も最近フランスでの武者修行を終えて帰って来たみたいだけど」
北斗に手を引かれ、店の中へと入って行く。中に入った花梨は、外観と違わず可愛らしいインテリアを目の当たりにして、思わず感嘆の声を漏らした。
「可愛い……」
店内をキョロキョロと見回していると、奥から背の高い男性が現れ、北斗に向かって笑いかけた。
「よっ、菱川。久しぶりだな」
「仁科こそ、元気だったか?」
「まぁそれなりにね。今日は奥の部屋だったよな?」
「悪いな、オープン前に入れてもらっちゃって」
「平気平気。コースの開始は十八時で承っているから、その前くらいに一度部屋に行くよ」
「あぁ、よろしく」
二人の会話を聞きながら、すごく親しい間柄なのだと察したが、花梨は彼に見覚えがなかったため、高校以外の友人なのだと推察する。
仁科は花梨をみると、笑顔を浮かべた。
「本日はお越し下さり、誠にありがとうございます。どうぞゆっくりとお過ごしください」
「あ、ありがとうございます」
緊張した様子で頭を下げた途端、北斗は花梨の手を引き、店の奥へと歩き出した。
「菱川くん……あの、今ってどこに向かってるの……?」
食事の約束をしたからこうしてついてきているが、先ほどの出来事について何も説明がなく、事情がわからず困惑する。
しかしそう尋ねても北斗からの返答はなく、花梨が俯いて小さなため息をついた時だった。突然北斗の足が止まり、振り返った北斗は申し訳なさそうに微笑んだ。
「黙って連れてきてごめん。実はこの店を予約していたんだ」
二人の目の前には、まるでパリの邸宅を思わせる可愛らしい一軒家が建っており、玄関先の看板には『Bistro Soleil』と書かれていた。
しかし、お店を前にした花梨は青ざめた顔で北斗を見つめる。
「予約って……すごく高そうなお店だよ!」
「今日は俺が誘ったから、そういうことは気にしなくて大丈夫」
「むしろそっちの方が気になっちゃうよ……」
「いいからいいから。それにこの店、友だちのお父さんが経営しているんだ。息子の方も最近フランスでの武者修行を終えて帰って来たみたいだけど」
北斗に手を引かれ、店の中へと入って行く。中に入った花梨は、外観と違わず可愛らしいインテリアを目の当たりにして、思わず感嘆の声を漏らした。
「可愛い……」
店内をキョロキョロと見回していると、奥から背の高い男性が現れ、北斗に向かって笑いかけた。
「よっ、菱川。久しぶりだな」
「仁科こそ、元気だったか?」
「まぁそれなりにね。今日は奥の部屋だったよな?」
「悪いな、オープン前に入れてもらっちゃって」
「平気平気。コースの開始は十八時で承っているから、その前くらいに一度部屋に行くよ」
「あぁ、よろしく」
二人の会話を聞きながら、すごく親しい間柄なのだと察したが、花梨は彼に見覚えがなかったため、高校以外の友人なのだと推察する。
仁科は花梨をみると、笑顔を浮かべた。
「本日はお越し下さり、誠にありがとうございます。どうぞゆっくりとお過ごしください」
「あ、ありがとうございます」
緊張した様子で頭を下げた途端、北斗は花梨の手を引き、店の奥へと歩き出した。