妖精渉る夕星に〜真摯な愛を秘めた外科医は、再会した絵本作家を逃さない〜
9 あの日の真実
金曜日は朝からずっとそわそわしていた。毎日連絡を取り合ってはいたが、実際に会うのは四日ぶり。ついおしゃれとメイクにも気合いが入ってしまう。
しかもお泊まりということもあって、荷物も普段より多めになり、その荷物を持って出勤することに緊張を覚えた。
大きく深呼吸をし、
「おはようございます」
といいながら、自分の机に向かって早歩きで移動すると、その様子を見ていた花井がニヤニヤしながら花梨を見つめた。
「おはよう、山之内さん。なんだか今日は一段と可愛らしい服装だよねぇ」
「そ、そうですか?」
「うんうん、それにメイクもヘアも可愛いし」
「い、いつもと同じだと思いますが……」
「それに……一泊旅行にでも行くような荷物だし」
「きょ、今日は友人の家に遊びに行くことになっていまして……」
言ってしまってもいいのだが、仕事とプライベートの境界線がわからず、言い訳のように誤魔化してしまう。
しかし花井にはしっかりとバレているようで、興奮した様子で嬉しそうに悶えながら、両手で頬を押さえた。
「あぁん! もうっ、もったいぶらないで、彼氏が出来たって言っちゃえばいいのにー!」
「えぇっ⁉︎ な、なんでわかるんですか⁉︎」
「だって最近すごく可愛いくなったし、スマホ見る目が嬉しそうだし。それにそんな可愛い姿で出勤したら、バレバレに決まってるじゃない! っていうか、いつ彼氏が出来たの⁉︎ 教えてくれないなんて水臭ーい!」
「えっ、いや、ほ、本当につい最近のことで……私も思いがけない事態だったし、こういうことは仕事中に話す内容ではないかと……」
「そうかもしれないけど、恋バナは大好物なのよー! 今度詳しく聞かせてね!」
「は、はい……」
その時だった。部屋をノックする音がして、受付担当の女性が真っ青な顔で入ってきた。
「花井さん、山之内さん、おはようございます。ちょっと急ぎの用があるんですが、館長が出張でいらっしゃらないので……」
「おはようございます。どうかされましたか?」
「実は今日の午前中のショップ担当の子が急に熱が出てしまったみたいで、休むと連絡があったんです。代わりの人にお願いしたんですが、その人もお昼まで予定があるそうで……」
「今日は元々木村さんが休みを取っていたから、人数もギリギリって言ってましたもんね」
あたふたしている様子から、相当困っているのが伝わってくる。花梨は少し考えてから、スッと手を上げる。
「午前中だけでしたら、私がショップに入りますよ」
「えっ、いいんですか⁉︎」
「もちろん。花井さん、確かリモートで会議が入ってましたよね。一時間くらいなら、今日の業務にそこまで支障は出ないので大丈夫です」
その言葉を聞いた花井は、
「山之内さん、じゃあ申し訳ないけどお願いしてもいいかな?」
と両手を合わせて頼まれ、花梨も頷いた。
しかもお泊まりということもあって、荷物も普段より多めになり、その荷物を持って出勤することに緊張を覚えた。
大きく深呼吸をし、
「おはようございます」
といいながら、自分の机に向かって早歩きで移動すると、その様子を見ていた花井がニヤニヤしながら花梨を見つめた。
「おはよう、山之内さん。なんだか今日は一段と可愛らしい服装だよねぇ」
「そ、そうですか?」
「うんうん、それにメイクもヘアも可愛いし」
「い、いつもと同じだと思いますが……」
「それに……一泊旅行にでも行くような荷物だし」
「きょ、今日は友人の家に遊びに行くことになっていまして……」
言ってしまってもいいのだが、仕事とプライベートの境界線がわからず、言い訳のように誤魔化してしまう。
しかし花井にはしっかりとバレているようで、興奮した様子で嬉しそうに悶えながら、両手で頬を押さえた。
「あぁん! もうっ、もったいぶらないで、彼氏が出来たって言っちゃえばいいのにー!」
「えぇっ⁉︎ な、なんでわかるんですか⁉︎」
「だって最近すごく可愛いくなったし、スマホ見る目が嬉しそうだし。それにそんな可愛い姿で出勤したら、バレバレに決まってるじゃない! っていうか、いつ彼氏が出来たの⁉︎ 教えてくれないなんて水臭ーい!」
「えっ、いや、ほ、本当につい最近のことで……私も思いがけない事態だったし、こういうことは仕事中に話す内容ではないかと……」
「そうかもしれないけど、恋バナは大好物なのよー! 今度詳しく聞かせてね!」
「は、はい……」
その時だった。部屋をノックする音がして、受付担当の女性が真っ青な顔で入ってきた。
「花井さん、山之内さん、おはようございます。ちょっと急ぎの用があるんですが、館長が出張でいらっしゃらないので……」
「おはようございます。どうかされましたか?」
「実は今日の午前中のショップ担当の子が急に熱が出てしまったみたいで、休むと連絡があったんです。代わりの人にお願いしたんですが、その人もお昼まで予定があるそうで……」
「今日は元々木村さんが休みを取っていたから、人数もギリギリって言ってましたもんね」
あたふたしている様子から、相当困っているのが伝わってくる。花梨は少し考えてから、スッと手を上げる。
「午前中だけでしたら、私がショップに入りますよ」
「えっ、いいんですか⁉︎」
「もちろん。花井さん、確かリモートで会議が入ってましたよね。一時間くらいなら、今日の業務にそこまで支障は出ないので大丈夫です」
その言葉を聞いた花井は、
「山之内さん、じゃあ申し訳ないけどお願いしてもいいかな?」
と両手を合わせて頼まれ、花梨も頷いた。