妖精渉る夕星に〜真摯な愛を秘めた外科医は、再会した絵本作家を逃さない〜
11 愛がくれる自信
そこはまるで庭園のような場所だった。たくさんの木々や花が咲き、緩やかな川も流れていた。
その中でも特に大きな木の根元に、及川先生は静かに眠っていた。土に埋め込まれた墓石の前に、持ってきた花をたむけると、花梨と北斗は静かに手を合わせた。
及川先生が亡くなってから初めての春がやって来たが、二人揃って挨拶をしていないことに気付き、お礼と報告を兼ねてお墓参りにやって来たのだ。
花梨が目を開けると、北斗はまだ熱心に報告をしているようだった。そんな彼の横顔を見ながら、幸せで胸がいっぱいになる。
彼と付き合い始めてから、もうすぐで一年になる。互いに怒るタイプではなかったこともあり、穏やかな交際が続いていた。刺激よりも安心感を求めていた花梨は、北斗が与えてくれる愛情が心地よく、この日々がずっと続くことを願っていた。
ようやく報告が終わったのか、顔を上げた北斗は満足げに微笑んだ。
「お待たせ。報告することが多過ぎて、時間かかったよ」
「どんな報告をしたの?」
「いろいろね。今までたくさん心配かけちゃったからさ……俺たちはもう大丈夫って伝えたよ」
「うん……そうだね。私たちが繋がれたのは、及川先生がいたからだし、先生はいつも見守ってくれているって思うもの」
その時、及川先生の墓石の上に一羽の鳥がとまった。二人を見るなり、首をちょこんと動かし、飛び去ってしまう。
その鳥を目で追った二人は、顔を見合わせて微笑み合った。
「先生が来たのかな」
「そうかもね。二人なら大丈夫って言ってくれたんじゃないかな」
卒業してから今までずっと、及川先生は二人を見守ってくれていた。きっとこれからも二人の中では、その存在が消えることはないだろう。
「実は今日、花梨を連れて行きたいところがあるんだ」
「えっ、どこ?」
「うーん、どうしようかな……とりあえず着くまでは内緒」
「そうなの? なんか気になっちゃうけど……」
「じゃあそのもやもやを解消するためにも、早く行こうか」
すると北斗が花梨の手を取ったので、二人は駐車場に向かって歩き出した。
どこに行くのかは気になったが、やけに楽しそうにしている北斗が可愛いく見えて、花梨の胸がキュンとときめく。楽しい気持ちが花梨にも伝染し、足取り軽く車に乗り込んだ。
その中でも特に大きな木の根元に、及川先生は静かに眠っていた。土に埋め込まれた墓石の前に、持ってきた花をたむけると、花梨と北斗は静かに手を合わせた。
及川先生が亡くなってから初めての春がやって来たが、二人揃って挨拶をしていないことに気付き、お礼と報告を兼ねてお墓参りにやって来たのだ。
花梨が目を開けると、北斗はまだ熱心に報告をしているようだった。そんな彼の横顔を見ながら、幸せで胸がいっぱいになる。
彼と付き合い始めてから、もうすぐで一年になる。互いに怒るタイプではなかったこともあり、穏やかな交際が続いていた。刺激よりも安心感を求めていた花梨は、北斗が与えてくれる愛情が心地よく、この日々がずっと続くことを願っていた。
ようやく報告が終わったのか、顔を上げた北斗は満足げに微笑んだ。
「お待たせ。報告することが多過ぎて、時間かかったよ」
「どんな報告をしたの?」
「いろいろね。今までたくさん心配かけちゃったからさ……俺たちはもう大丈夫って伝えたよ」
「うん……そうだね。私たちが繋がれたのは、及川先生がいたからだし、先生はいつも見守ってくれているって思うもの」
その時、及川先生の墓石の上に一羽の鳥がとまった。二人を見るなり、首をちょこんと動かし、飛び去ってしまう。
その鳥を目で追った二人は、顔を見合わせて微笑み合った。
「先生が来たのかな」
「そうかもね。二人なら大丈夫って言ってくれたんじゃないかな」
卒業してから今までずっと、及川先生は二人を見守ってくれていた。きっとこれからも二人の中では、その存在が消えることはないだろう。
「実は今日、花梨を連れて行きたいところがあるんだ」
「えっ、どこ?」
「うーん、どうしようかな……とりあえず着くまでは内緒」
「そうなの? なんか気になっちゃうけど……」
「じゃあそのもやもやを解消するためにも、早く行こうか」
すると北斗が花梨の手を取ったので、二人は駐車場に向かって歩き出した。
どこに行くのかは気になったが、やけに楽しそうにしている北斗が可愛いく見えて、花梨の胸がキュンとときめく。楽しい気持ちが花梨にも伝染し、足取り軽く車に乗り込んだ。