転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~
第七章 元家族はかかわってこないでください!
アッシュ王国、ダスター領。
領主館である屋敷にて、領主ドレイク・ダスターの執務室には無造作に積まれた書類の山があった。
ドレイクはそれを睨みつけながら、力の入った拳をドンッ!とテーブルに叩きつける。
「なにがどうなっているのだこれは!」
その衝撃で書類は飛び散り、テーブルからひらひらと床に落ちていく。
それら一枚一枚には、目を疑いたくなるほど莫大な被害額と請求金額が記されていた。
ダスター伯爵家が治めているダスター領は、現当主ドレイク・ダスターの指揮によって開拓が進められている真っ只中である。
前妻であるマーレットとの政略結婚により資金提供を受け、充分な資金と人手も集まり領地開拓は順調であるように見えていた。
しかし一カ月ほど前から開拓事業は様々な障害にぶつかり、ドレイクの頭をこれ以上ないほど悩ませる事態となっていた。
開拓を予定していた森林地帯では魔物と病害虫の大量出没が起き、山岳地帯では天候不順と土壌環境の悪化に陥る。
それらは近隣の村にも影響を及ぼし、領民たちが次々に別の土地に逃げ耕作放棄地が増える事態にも発展する。
魔物への対処や環境整備のための物資と設備を他領主から借り受け、可能な限りの資金も投入して対応に当たっているが好転の兆しはない。
その結果積もりに積もったのがこの被害額と請求額の書類の束である。
「なにを間違えた……! 俺はいったいどこで道を誤ったというのだ……!」
ドレイクの手腕は決して悪いものではなかった。
強いて言うのなら運が悪かっただけ。
自然環境にそっぽを向かれて予定していた以上の資金が必要になってしまい火の車となっただけだ。
似たような事態に陥る領地は他でも散見される。
元より領地の状況が芳しくなく開拓や経営に頭を抱えている領主も多くいて、後か先かの違いだけ。
ドレイクは後々になって領地の環境が荒れてしまい、その程度が少し他の領地よりも大きかったのが運の悪かったところだろう。
領地開拓の失敗、という言葉がドレイクの脳裏に駆け巡っている。
王家からの信頼も見る間に失墜しており、これ以上の失敗を積み重ねると爵位の剥奪もあり得る状況となっていた。
「ドレイク様!」
「あぁ!?」
怒り心頭の最中、執務室に従者のひとりが駆け込んでくる。
その声に苛立ちを加速させ、ドスの利いた声で返事をすると、従者はビクッと肩を揺らした。
しかしすぐに平静を取り戻すと、淡々とした声音で告げる。
「さらなる被害の報告がありました。開拓予定地となっていた山岳地帯にて大規模な土砂災害が発生し、交通網の麻痺ならびに近隣の町や村への被害が……」