転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~

第二章 精霊が飛び出す絵本

 屋敷での生活を始めて早くも一カ月。
 新しい環境での暮らしにも随分と慣れてきた。
 ロビンの要領のいい教え方のおかげで勉強も捗り、文字の読み書きに関してはほぼ完壁である。
 計算については元から日本人の白鳥翼の知識が役立ったので、そこまで苦戦はしなかった。
 あとは勉強に熱心になっていたのも、読み書きと計算を早く覚えられた要因となっている。
 アウルは命を救ってくれたクロウに恩返しをしたいと思っている。
 屋敷で世話まで焼いてもらって、彼の厚意に報いたいと考えており、差し当たって頑張れることが勉強だけだったのでここ最近は勉強に熱心になっていた。
 ただ、魔力操作の勉強に関しては、思いのほか行き詰まってしまっていた。

「まだやはり魔力の感覚を掴むのが難しいですかね?」

「ごめんなしゃい……」

 魔法が使えない分、魔力だけを操作して魔道具や魔法薬の製作に貢献しようと試みていたが、これがなかなかに難しい。
 体内に宿っているとされる不可視の魔力。それを感じ取って手足のように自由に動かせるようにならなければいけないとのこと。
 練習を始めてから二週間以上経つが、その魔力の感覚がまったく掴めずにいた。

(体内に宿ってる魔力なんてどう感じ取ればいいんだ。前の世界ではそんなものなかったから)

 文字の読み書きと計算についてはある程度前世の知識が役立つ部分があったが、魔力についてはそうもいかない。
 こればかりはこの世界に生まれた住人たちと同じように、一から覚えなければならないことだった。
 おまけにアウルの場合は、人より少し魔力の感覚を掴みづらい体質らしい。
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