転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~

第三章 精霊使いはじめました

 精霊記の一件があってから一週間後。
 フェンリルがいる生活にも随分と慣れてきた。
 フェンリルはいつも契約精霊としてアウルのそばを離れずについてきてくれる。
 お願いすれば背中に乗せて走ってもくれるし、遊び相手にもなってくれる最高の相棒だ。
 屋敷の使用人たちからもフェンリルは好評で、ふたりで屋敷内を散歩していると触らせてほしいとよく頼まれるようになった。
 元々は恐れられていた精霊だが、今はアウルの契約精霊となったことで人懐っこくなり、傍目から見れば完全にただの甘えん坊の白狼である。

 本当に昔は人々と争っていたのか疑わしい。
 精霊は魔物の上位存在で、かつての人々は精霊を封じ込めることでしか抑制ができなかったそうだ。
 そして封印するのに一番適した媒体が〝本〟だったらしく、封じた際には精霊が辿ってきた生涯が物語として本に焼きつくとされている。
 そんな精霊記に封じ込められて、人と争うことはもうやめようと反省でもしたのだろうか?
 ともあれ今はかわいくて従順な飼い精霊なので、昔のことは正直どうだっていい。
 いずれは契約精霊としても活躍してくれるだろうし、よりフェンリルとは親密になっていきたいとアウルは思っていた。
 ちなみに契約精霊は宿主から魔力を与えてもらうことで力を発揮できるとのこと。
 そのためアウルが魔力操作をできるようになったら、フェンリルは本来の力を使えるようになるということだ。
 伝説の精霊の力、今からその目で見られるのが楽しみである。

 そしてその魔力操作の練習の方も、意外な進展があった。
 精霊記を読んだ際に魔力を吸われて眠くなるということがあったが、そのおかげか魔力の感覚というのを朧(おぼろ)気(げ)ながら掴むことができた。
 魔力を消費して扱う魔道具を使えば、感覚を掴めるようになるかもしれないとロビンが言っていたので、精霊記に魔力を吸われて同じ現象が起きたのかもしれない。
 持ち主の魔力を消費するという仕組みは、魔道具も精霊記も同じなので、原理としては近いものなのだろうとのみ込むことにした。
 まさか精霊記でそれを実現することになるとは思わなかったが。
 など色々と好調に物事が進み、風向きがとてもよいとアウルは感じていたが……
 ひとつの悩みが、五歳児の小さな頭を抱えさせていた。

「あちゅい~……」

「そろそろ夏が近づいてきましたからね」
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