転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~
第四章 仮面の奥に見せたスイーツよりも甘いもの
氷室の件が解決してから三日後。
執務室にいるクロウは、氷室の高温化の時と同様に、再び頭を抱えることになっていた。
しかし今回は領地開拓に関する問題に頭を抱えているわけではない。
氷室の一件に手を貸してくれたアウルに、多大な〝借り〟ができてしまったことに対する悩みだ。
契約精霊のフェンリルの氷を司る力と、アウルの持つ莫大な量の魔力によって、領内の氷不足を解消してもらった。
拾ってくれた恩返しだから褒美は要らないと言われたが、さすがにそうはいかないほどの大活躍と言える。
これでなにも返さずに大きな借りを作りっぱなしというのは、この地の統治を任された領主としてなんだか落ち着かない。
いや、落ち着かないのは本当に大きな借りを作ってしまったからなのか?
なにも褒美を与えていない罪悪感のせいなのか。
というより、アウルになにも渡せなかったという〝残念〟な気持ちだけが、心の中に漂っているように思える。
彼の脳裏に浮かんでいるのは、欲しいものをもらって喜んでいるアウルの姿だけ。
本当はただ、自分がこれを見たいだけなのではないだろうか。
そんな不思議な気持ちに名前をつけられず、クロウはとりあえずは借りを返す方向でアウルに褒美を与えようと思っている。
ただ、今は欲しいものもないとのことで、いったいなにを渡すべきか、あるいはなにをしてやるべきか深く迷っているということだ。
「クロウ様、領内で氷不足になっていた町や村についてご報告が。クロウ様が元凶の魔物を討伐し、アウル様とフェンリル様がお作りになった氷のおかげで、すっかり氷室の状態も安定しているとのことです」
執務室に従者のストークがやってきて、領内の近況について報告をしてくれる。
それを聞いている最中もアウルへの褒美を考えていて、クロウにしては珍しくぼんやりとした顔をしていた。
主人のその様子を見ていたストークは違和感を抱いて首を傾げたが、特に言及せずに近況報告を終える。
そのままストークは執務室を後にしようとしたが、仕事に身が入っていないことを自覚したクロウは、観念して彼を呼び止めることにした。
「ストーク、少しいいか」
「はい、なんでしょうかクロウ様?」
「アウルはなにかを欲しがったりしたことはあるか?」