偽装婚約者は愛したがりの年下御曹司
まっさらなチャペルで
以前黎也くんに連れて行ってもらったイタリアンレストランで、私はガチガチに緊張していた。
同じテーブルに座っているのは、勤務先の社長、副社長、そして社長夫人。御門一族の華々しいオーラが眩しくて、自己紹介する時には舌を噛みそうになってしまった。
クリスマス前に同棲を始めた私と黎也くんは、将来的に結婚も意識していたためすぐにお互いの両親に挨拶をすることにしたのだ。
郊外にある私の実家は、ごく一般的なサラリーマン家庭。
結婚相手が御門ホテルの後継者と知って両親は腰を抜かしそうになっていたけれど、年末の休みを利用して挨拶に行くと、年下ながらしっかりしている彼のことをすぐに気に入って、結婚にも賛成してくれた。
そして、新たな年を向けたお正月休みのある日。今度は、御門家のご両親と、会食をする流れになったというわけだ。
社長であるお父様には直樹の件でご迷惑をかけた負い目があったけれど、お父様が彼の発言をしっかり録音していたおかげで、刑事事件として立件できることになったそう。
私が一度お父様に謝りに行ったところ、『美冬さんと彼とは別の人間なんだから、あなたが後ろめたく思うことはなにもありませんよ』と、懐の深い言葉をかけてもらった。