偽装婚約者は愛したがりの年下御曹司
癖の強いファッションデザイナー

 翌週水曜日。私はリーシング部の代表として、上司の谷村さんと会議に参加していた。

 会議室前方のモニターには、ひとりのファッションデザイナーの経歴と顔写真が映し出されている。

 才賀(さいが)(ほまれ)、三十二歳。彼の独創的なデザインは若手の頃から国内外で注目を浴び、三十歳の頃にはファッションの中心地フランスで開催されたコンテストで、日本人初となるグランプリを受賞した。

 右側のサイドを刈り上げ、左側は前髪を垂らしたアシンメトリーなヘアスタイルが個性的で、彫りが深くぱっちりとした大きな目が少し日本人離れした印象だ。

「才賀先生の独自ブランド『誉―HOMARE―』を、ショッピングエリアのリニューアルオープンの目玉として誘致したいと考えています。成功すれば、間違いなく御門ホテルの価値も注目度も上がります」

 モニターの前でそう説明するのは、御門副社長だ。

 こういう時の彼は、年下であることを忘れそうになるくらい、堂々としている。先週彼が少しだけ匂わせていたキラーテナントというのは、才賀氏の手掛ける店のことだったようだ。

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