偽装婚約者は愛したがりの年下御曹司
信じたい気持ちと裏腹に
知り合いに会わないプランを考えます――。
クリスマスデートに難色を示した私に、以前黎也くんが言った言葉だ。
私はてっきり、知り合いに出くわす可能性の低い場所へ遠出をするとか、個室のレストランで食事をするとか、そういう意味だろうと考えていたのだけれど。
「ほら、美冬さん。こっち」
「う、うん……」
週末の土曜日――ましてやクリスマス前とくれば、本来混雑しているであろう、遊園地の入場口。しかし、今その場所を歩いているのは、私と黎也くんだけだ。
御門ホテル系列の遊園地とはいえ、いったい彼はいくら払ったのだろうと考えると、めまいがしてくる。
だって、視界に映るアトラクションはどれもこれも、通常通り動いているのだ。
その上電飾をちかちかさせているし、最後に水しぶきを上げて急降下するジェットコースターだって、じゃばじゃば水を流し放題だ。
アトラクションの説明をしてくれるスタッフも各所に立っているし、着ぐるみの人形や、掃除のスタッフもひとりやふたりじゃない。
「本当に貸切りにしたの……?」
「はい。これなら知り合いに会いませんから」