(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
1. 失恋≠最悪な出会いと失態
お気に入りの場所は、突然の失恋に沈む私を受け入れてくれる。
気を抜けば滲む涙を、瞬きを繰り返して必死に押し戻す。
それから眼前の重みのある古びた門を預かった鍵で開けた。
キイ、と甲高い音が、静寂に包まれた美術館を囲む庭園に響く。
きちんと手入れされ、季節ごとにたくさんの花々が咲き乱れる様は、街中とは思えないくらいに美しい。
昼間とは違う厳かな雰囲気にしばし見惚れつつ、門を内側から施錠した。
六月中旬のしっとりした空気にまじる濃い緑の匂いを感じる。
やわらかな月の光に照らされた石畳の上に、カツンとヒールの音が高く、細く響く。
ふいに先を急ぐ足が止まる。
大人がひとり横になれるほどの長さと幅がある、目的地の大きなベンチにはすでに先客がいた。
金曜日の午後九時半過ぎの今、美術館の館長で庭園管理人の城崎さんはすでに退勤しているし、この鍵の持ち主の頼子さんは自宅にいる。
まさか、不審者?
仰向けに寝転がっている男性の姿に、鼓動が痛いくらいの音を立てる。
足音に注意して、そっとベンチのそばまで近づく。
目を閉じている男性は眠っているように見えた。
外灯の光を頼りに、恐る恐る覗き込んだ男性の容貌に思わず息をのむ。
気を抜けば滲む涙を、瞬きを繰り返して必死に押し戻す。
それから眼前の重みのある古びた門を預かった鍵で開けた。
キイ、と甲高い音が、静寂に包まれた美術館を囲む庭園に響く。
きちんと手入れされ、季節ごとにたくさんの花々が咲き乱れる様は、街中とは思えないくらいに美しい。
昼間とは違う厳かな雰囲気にしばし見惚れつつ、門を内側から施錠した。
六月中旬のしっとりした空気にまじる濃い緑の匂いを感じる。
やわらかな月の光に照らされた石畳の上に、カツンとヒールの音が高く、細く響く。
ふいに先を急ぐ足が止まる。
大人がひとり横になれるほどの長さと幅がある、目的地の大きなベンチにはすでに先客がいた。
金曜日の午後九時半過ぎの今、美術館の館長で庭園管理人の城崎さんはすでに退勤しているし、この鍵の持ち主の頼子さんは自宅にいる。
まさか、不審者?
仰向けに寝転がっている男性の姿に、鼓動が痛いくらいの音を立てる。
足音に注意して、そっとベンチのそばまで近づく。
目を閉じている男性は眠っているように見えた。
外灯の光を頼りに、恐る恐る覗き込んだ男性の容貌に思わず息をのむ。
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