(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
7.「誰にも奪われたくない」
「沙和、おはよう」


至近距離で響いた優しい声に重い瞼を開く。

すぐそばに迫る端正な容貌に、何度か瞬きを繰り返す。

厚いカーテンの隙間から漏れる日の光と額に落ちた口づけに、寝起きで曖昧だった記憶が一気によみがえった。

思い出した途端、体が熱を帯びる。


「お、おはよう……」


「起きたな。寝ぼけている姿、可愛かった。体、つらくないか?」


「だ、大丈夫……」


「よかった、でも無理するなよ?」


質問の意味に頬が火照る私の髪をさらりと撫でて、愁さんがベッドから起き上がる。


「今日ほど仕事が嫌になった日はないな」


苦笑して歩きだした彼の、ほどよく筋肉のついた綺麗な背中に見惚れる。

心の奥がくすぐったくて頬の熱がなかなか引かない。


「俺はもう行かなきゃいけないけど、沙和は休みだしゆっくりしていて。帰りは遅くなるけどここで待っていてくれてももちろん構わないから。むしろ嬉しい」


身支度を終え、ベッドサイドに腰かけた愁さんに甘く見つめられ、鼓動が跳ねた。


「あの、でも……」


気恥ずかしさと急速に近づく距離に戸惑いつつ発した声を彼がやんわりと遮る。


「一緒に暮らす決意を早くして?」


目を見開く私の唇を奪って、颯爽と愁さんは部屋を出て行く。

私の体温がさらに上昇したのは言うまでもない。
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