(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
8.誓いのキスは庭園で
「ねえ、あなたたちまだ結婚しないの?」


「……頼子さん、いくらなんでも直接的すぎますよ」


タブレットを操作しながら尋ねる頼子さんを千奈さんが穏やかになだめる。

愁さんが上海から帰国して半年以上が経ち、季節は移ろぎ四月半ばを迎えた。

仕事が休みの今日、千奈さんと私は頼子さんに呼ばれ美術館にやってきた。

淡いベージュの壁紙にアンティーク調のソファが置かれた応接室で、三人そろって大切な打ち合わせ中だ。

ほんの数カ月前では考えられなかった光景がなんだかうれしくて小さく口元を綻ばせる。

立花さんとの話し合いを終えた千奈さんは愁さんにことわって私に謝りに来てくれた。

謝ってもらう必要はないと何度も伝えたけれど、気が済まないからと言われ、頭を下げられた。

真摯な姿に愁さんが友人関係を続けている理由がわかった気がした。

その後、改めて様々な事柄を素直に話し合った千奈さんと私は似た部分が多いこともあり、意気投合して連絡を取り合うようになった。

今では下の名前を呼び合うようになり良い友人関係を築いている。

千奈さんは幼い頃からの癖で愁さんを下の名前で呼んでいるのを気にして、律義に確認までしてくれた。

私が愁さんと知り合う前からのふたりの関係性があるので構わないと返答した。

千奈さんは同様の内容を愁さんにも確認してくれたようで、後日愁さんからもその件について改めて尋ねられて同様に答えた。
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