(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~

2.再会は小さな罠

「沙和、おはよう。体調は大丈夫なの?」


週明けの月曜日、頭痛も治まり大手町駅から会社へと向かう途中、同期で親友の名取(なとり)すずに声をかけられた。

大きな二重の目が目を引くすずは、個人向け投資商品の企画部に所属している。


「おはよう、すず。金曜日はごめんね、心配かけて」


「ううん、頼子さんの電話にはビックリしたけど、無事でよかった」


すずが顎下で切りそろえられた髪を揺らして返答する。

すずからも土曜日の入浴中に連絡があったので、折り返しの電話をして謝罪と事の次第をすべて伝えていた。

なによりもすずは私の失恋を気にかけてくれていた。

私たちは同じヨガ教室に通っているので、すずも頼子さんとは知り合いだ。

金曜日の夜、私から帰宅連絡がなかったため、頼子さんはすずに私の居所を尋ねていたそうだ。

さらに頼子さんは城崎さんにも連絡して、朝になって連絡がなければ警察に相談して、出張先から急いで戻って捜すつもりだったと聞いたときは申し訳なさでいっぱいになった。

館長の城崎さんは亡くなった祖父の親友でもあり、普段から私を気にかけてくれている。

私の母方の実家は代々造園業を営んでいる。

祖父は知識も経験も豊富で、多くの職人を育てていた。

幼い頃はよく祖父の仕事を見学し、手伝いをさせてもらっていた。

祖父は私をとても可愛がって多くの植物の知識を与えてくれた。

また、祖父を訪ねてきていた城崎さんとも度々顔を合わせていた。
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