(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
6.「俺の限界を試してる?」
どんなに悩んでも答えは出ず、かといって平然と愁さんと会う自信もなかった私は、パーティーの翌日から愁さんとの連絡を避けた。

いい年をしてただ逃げ続けるなんて最低だとわかっていても、覚悟がもてなかった。

庭園に行くのもやめ、頼子さんにも会いづらくてヨガ教室も休みがちになっていた。

何度か心配されて電話ももらっていたけれど仕事が忙しい、ともっともらしい理由をつけていた。

皮肉にも、愁さんに恋をして課長への恋はほぼ憧れに近かったと思い知った。

失恋しても、相手の幸せを願えたし、自分の気持ちを理性的に抑え込めてもいた。

愁さんへの気持ちは課長へのものとは全然違う。

考えないようにしていても、無意識に想ってしまう。

出会ってからの時間は短く、知っている事柄はとても少ないと言い聞かせても、自分勝手な恋心はどんどん育っていく。

そんな折、すずにパーティーの件がネットニュースになっていると言われ、驚いた。


『板谷社長、正式に婚約か?』と派手な見出しとともに後ろ姿の愁さんと私の写真が掲載されていた。

私の氏名などの記載はないが、やはりドレスへの勝手な推測が大げさに書き立てられていた。

これほど周囲はドレスの色ひとつに興味津々なのに愁さんは私が万が一にでも色の意味を知って、気にしないと本当に考えていたのだろうか。

なにも知らず贈られたドレスを着用しただけで、これほど注目される彼の知名度、立場を改めて思い知り、さらに胸が詰まった。
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