売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜

四章 絶望

(ミリアムside)



──わたくしはあの日まで成功者だった。

ミリアムは伯爵令嬢としての地位、両親の愛情、婚約者もすべてミリアムのもの。
邪魔者はいなくなり、これから幸せな日々を過ごせると思っていた。

シルヴィーは父と前妻の子どもだった。純朴だが美しい容姿、何をしても動じない心の強さ。
だけどパーティーにも出られずにずっと部屋にこもっている根暗。
それなのにこちらを見て軽蔑するような視線を送ってくるところが気に入らない。
その視線がミリアムを苛立たせる。

それにミリアムよりもシルヴィーの方が屋敷の人間にも慕われていた。

(明らかにわたくしの方が〝上〟なのに……っ)

父と同じ火魔法を使えるミリアムに勝てるわけがないのだ。
今までもそうやって火魔法の力を見せつけてやった。

それで大人しくなったかと思いきや、父の代わりに何かをやり始めて領民や屋敷の人間たちに媚びている。
どうにかしてミリアムの上に立とうとしているのだろう。
そんなことをしてもミリアムを追い越せるはずはないのに。
母と一緒にシルヴィーに自分の立場を自覚させてあげているのに自分のことは自分でやりだすし、貴族としてのプライドもない。
ミリアムにはシルヴィーが恥を晒しながら平然と日々を過ごしている意味がわからなかった。

(こんな生活しているなら平民にでもなったらいいのに。貴族として生きている意味があるのかしら……)
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