始まりは一夜の出会いから
Episode8
 籍を入れて佐々木になって半年。

 新くんに働きに行くのをどこまでもガードされて、今は専業主婦になっている。

 働きたい理由として新くんだけの負担にしたくないと言ったら「家に居てくれないと不安で逆に負担!」と意味わからない言葉で防がれ、今回は私が折れることにした。

 元々働きたいとか強く思っていたわけでは無いけど、子供がいるわけでもないのに養われているだけなのもと気が引けていると、新くんは「家庭を保ってくれるのも立派な役割、でしょ?」と言われて、その言葉で甘えることにした。

 その分ほとんどの家事は私に任せてとやっているけど、こうして旦那様の帰りを待つポジションなのも悪くはない。

 夕食の用意とかをしているとその頃になったら新くんが家に帰ってくる。

 玄関から音が聞こえて迎えに行って「おかえり!」と声を掛けると新くんは毎度嬉しそうに笑って靴を脱ぐなりすぐに抱き着いてくる。


「ただいま~!今日も可愛い、癒される」

「もう!それ毎日やらないとだめなの!?」

「ご飯にする?お風呂にする?それともわ・た・し?ってやつやってほしい」

「やりません」

「え~、聞かれなくても全部するけど」

「じゃあ聞かなくて良いじゃんね!?」


 そんな少しおバカな会話も時々して、笑いながら新くんは着替えの準備をする。

 これでもかってくらい盛大に甘やかしてくる新くんは、本当に仕事終わり?って思ってしまう程パワフルだ。
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