始まりは一夜の出会いから
Episode3
「へー!良かったじゃん、有咲にはしつこいくらいの人の方がいいよ」

「よ、く、な、い!」


 あの後、佐々木さんと何があったのかとしつこく聞いてきた美月に観念して、ランチタイム中に話していた。

 美月は佐々木さんとの事にかなり前向きな考えで、私とは常に真反対な考えをしている。


「私はいいと思うよ、佐々木さん。多分大事にしてくれるし、有咲を一番好きでいてくれると思う」

「何を根拠にそんな…」

「言ったでしょ、それなりに付き合い長いから分かるって」


 美月は上品にスプーンとフォークを使ってパスタを巻きながら話していた。

 付き合いが長いからってそこまで理解できるかは別問題でしょうに。

 そんな人の気も知らずに美月は惚けるような息を吐いている。


「いいなあ、私も彼氏欲しい〜」

「最近合コンは?」

「なんだかんだ、佐々木さん私のツボ押さえてたっぽくてさ、レベル高い男の人連れてきてくれるんだけど、最近佐々木さんからの紹介じゃないからダメだなー」


 レベル高い男の人とどうにもこうにもなって来なかったのは、理想が高すぎたのでは…、とは怒られるので言わずに黙っておく。

 美月は誰かと付き合っても長続きしない事が多くて、その理由はどれも美月の「何か違うんだよねぇ」というものが多い。それも理由も曖昧だ。


「あ、理想高いだけじゃ?ってなったでしょ今」

「ソンナコトナイヨ」


 美月に頬を抓られると後ろから「有咲?」と聞き覚えのある声がした。
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