この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
残されたものは〜side宗高〜
「文乃……?」
彼女はいつも朝6時にアラームをかけるから、僕も自然とその時間に目覚めるようになっていた。でも、今このベッドで眠るのは僕だけだ。隣にはまるで彼女がいない現実を突きつけるように、ぽっかりと一人分の空間ができている。
彼女が隣にいるとあんなに力が湧いてくるのに、そばにいないだけで、永遠にいなくなるのではないかと、根拠のない不安に襲われる。
深く、深く、繋がればこの原因のわからない不安は消えてなくなるのかと思っていたけれど、彼女の奥深くに向かって、突き上げれば突き上げるほど「もっと、もっと」と、消えるどころか、さらなる安心を求めてしまう自分がいた。
その不安から早く解放されたくて、僕はいつもより急ぎ足で支度を済ませて、本社に向かう。
ほら。社長室からは誰かの存在をこちらに教えるように、小さな明かりが漏れている。きっと、とびらを開けたらいつものように、探し求める彼女の声が返ってくるはず。でも僕の不安はますます大きくなってしまう。ここにも、彼女の姿はなかったから。
「……秀明か」
「社長、おはようございます」
「……おはよう。望月は…?」
「まだ来てないっすね…」
「電話は?繋がるか?」
「いえ……社長はしました?」
「いや。もう少し、待ってみるよ」
僕らは確かに気持ちを確かめ合って、そこには何の隔たりもなく心も身体もすべて繋がった。でも「好き」という言葉は、最後まで彼女の声で聞くことはできなかった。
《仕方ないですね》
その言葉が、彼女の精一杯の意思表示なのだと、僕にはわかっている。そんな信じてきたものが、たかが電話一本で崩れると思うと、僕にはどうしてもできない。彼女がいなければ、僕は強く立ち向かうことすらできない人間なのだから。
「社長、今日も泊まるんですか?」
「ああ、片付けたい案件があってな……お前は先に帰って良いから」
「あまり無理しないでくださいよ」
人が動き出すには忍びない夜が、今の僕には救いだった。また新たな日が登ってくると、その分、彼女がそばにいない現実を認めなければいけないから。
でも残酷なことに、近頃は日が登るのが日に日に早くなっている。受話器にチラチラと目配せをしながら、目の前の現実から逃げるように書類の山と向き合っていると、またすぐに朝がやって来てしまう。
僕は彼女と出会わなければ、こうしてただ時間だけが流れるように過ぎ、ずっと立ち止まったまま人生を終えていたのだろう。
僕が強くなるには、僕が僕として生きるには、どうしても彼女の存在が必要なのだ。僕の強さは、他でもない彼女のためにあるものだから。
でも……もう僕の隣には彼女がいない。彼女がそばにいなければ、どれだけ強くなれたって意味がない。
そんな見つめることしかできない目の前の受話器から、一本の電話の知らせが鳴る。今度こそ、どうか彼女であってくれ……。そう強く願って、やけに重い受話器を恐る恐る手に取るが、やはり電話の向こうから聞こえてきたのは彼女の声ではなかった。
「社長。あの……お父さまが受付から社長室に向かわれたようで……」
彼女はいつも朝6時にアラームをかけるから、僕も自然とその時間に目覚めるようになっていた。でも、今このベッドで眠るのは僕だけだ。隣にはまるで彼女がいない現実を突きつけるように、ぽっかりと一人分の空間ができている。
彼女が隣にいるとあんなに力が湧いてくるのに、そばにいないだけで、永遠にいなくなるのではないかと、根拠のない不安に襲われる。
深く、深く、繋がればこの原因のわからない不安は消えてなくなるのかと思っていたけれど、彼女の奥深くに向かって、突き上げれば突き上げるほど「もっと、もっと」と、消えるどころか、さらなる安心を求めてしまう自分がいた。
その不安から早く解放されたくて、僕はいつもより急ぎ足で支度を済ませて、本社に向かう。
ほら。社長室からは誰かの存在をこちらに教えるように、小さな明かりが漏れている。きっと、とびらを開けたらいつものように、探し求める彼女の声が返ってくるはず。でも僕の不安はますます大きくなってしまう。ここにも、彼女の姿はなかったから。
「……秀明か」
「社長、おはようございます」
「……おはよう。望月は…?」
「まだ来てないっすね…」
「電話は?繋がるか?」
「いえ……社長はしました?」
「いや。もう少し、待ってみるよ」
僕らは確かに気持ちを確かめ合って、そこには何の隔たりもなく心も身体もすべて繋がった。でも「好き」という言葉は、最後まで彼女の声で聞くことはできなかった。
《仕方ないですね》
その言葉が、彼女の精一杯の意思表示なのだと、僕にはわかっている。そんな信じてきたものが、たかが電話一本で崩れると思うと、僕にはどうしてもできない。彼女がいなければ、僕は強く立ち向かうことすらできない人間なのだから。
「社長、今日も泊まるんですか?」
「ああ、片付けたい案件があってな……お前は先に帰って良いから」
「あまり無理しないでくださいよ」
人が動き出すには忍びない夜が、今の僕には救いだった。また新たな日が登ってくると、その分、彼女がそばにいない現実を認めなければいけないから。
でも残酷なことに、近頃は日が登るのが日に日に早くなっている。受話器にチラチラと目配せをしながら、目の前の現実から逃げるように書類の山と向き合っていると、またすぐに朝がやって来てしまう。
僕は彼女と出会わなければ、こうしてただ時間だけが流れるように過ぎ、ずっと立ち止まったまま人生を終えていたのだろう。
僕が強くなるには、僕が僕として生きるには、どうしても彼女の存在が必要なのだ。僕の強さは、他でもない彼女のためにあるものだから。
でも……もう僕の隣には彼女がいない。彼女がそばにいなければ、どれだけ強くなれたって意味がない。
そんな見つめることしかできない目の前の受話器から、一本の電話の知らせが鳴る。今度こそ、どうか彼女であってくれ……。そう強く願って、やけに重い受話器を恐る恐る手に取るが、やはり電話の向こうから聞こえてきたのは彼女の声ではなかった。
「社長。あの……お父さまが受付から社長室に向かわれたようで……」