奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
プロローグ
(どうして……)
床に倒れたエリュシアは、こちらを見下ろし、歪んだ笑いを浮かべている『夫』の顔をぼうぜんと見上げていた。
アルタイア帝国の皇帝である彼に嫁いで三年、彼と顔を合わせる機会はほとんどなかったが、彼の顔は嫁いできた時とまったく変わっていないように見える――とうに六十を過ぎたはずなのに、三十そこそこに見える若々しさだ。
だが、その異様さに気づく余裕はもうなかった。
(なぜ、私を殺すの? ねえ、どうして?)
問いは言葉にはならず、意味のない音が口から吐き出されるだけ。
エリュシアの胸は短剣が突き刺さっていて、傷口からは血がどんどん流れ落ちていく。
「いつかは役に立つだろうと生かしておいたが――まさか、ここまで魔力が育つとはな。思いがけない拾い物だ」
笑いながら、オーディラスはエリュシアの襟首を掴んで強引に上半身を持ち上げた。
頭がぐらぐらして、考えがまとまらない。
ひゅうひゅうと、息苦しい呼吸を繰り返しているエリュシアに、彼は顔を近づけた。
「安心しろ。お前の魔力は、俺が使ってやる」
床に倒れたエリュシアは、こちらを見下ろし、歪んだ笑いを浮かべている『夫』の顔をぼうぜんと見上げていた。
アルタイア帝国の皇帝である彼に嫁いで三年、彼と顔を合わせる機会はほとんどなかったが、彼の顔は嫁いできた時とまったく変わっていないように見える――とうに六十を過ぎたはずなのに、三十そこそこに見える若々しさだ。
だが、その異様さに気づく余裕はもうなかった。
(なぜ、私を殺すの? ねえ、どうして?)
問いは言葉にはならず、意味のない音が口から吐き出されるだけ。
エリュシアの胸は短剣が突き刺さっていて、傷口からは血がどんどん流れ落ちていく。
「いつかは役に立つだろうと生かしておいたが――まさか、ここまで魔力が育つとはな。思いがけない拾い物だ」
笑いながら、オーディラスはエリュシアの襟首を掴んで強引に上半身を持ち上げた。
頭がぐらぐらして、考えがまとまらない。
ひゅうひゅうと、息苦しい呼吸を繰り返しているエリュシアに、彼は顔を近づけた。
「安心しろ。お前の魔力は、俺が使ってやる」
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