奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
第二章 隣国での生活と愛した人との再会
エリュシアは、がらんとした室内を見回した。
「――よし」
室内を確認したのは、念のためである。この部屋に、忘れ物なんてあるはずない。
トーマスとの再会からひと月。
このひと月の間に、エリュシアは工房や自室から様々な品を運び出してトーマスに預けていた。
母から受け継いだ工具は真っ先に持ち出した。それから、母が作ったり、帝国から持参したりした魔道具も。
自分の身の回りのものはほとんど持ち出さなかった。
いや、持ち出したいと思うほどのものがなかったのだ。だって、大半のものはマルタの懐に入ってしまったのだから。
今日が、作戦決行の日である。
エリュシアは今日、この離宮を離れる。もう二度と、ここに戻ってくることはないだろう。
(お母様も、きっと許してくださるわよね)
ひとつ、心残りがあるとすれば。
母の墓は、この離宮の側にあるのだ。二度と墓参りはできないけれど――きっと、母は許してくれる。
それに、母から受け継いだ形見の品はいくつかある。
形見をどこかの墓地に埋葬させてもらって、そこにお参りするという手もあるだろう。
「――よし」
室内を確認したのは、念のためである。この部屋に、忘れ物なんてあるはずない。
トーマスとの再会からひと月。
このひと月の間に、エリュシアは工房や自室から様々な品を運び出してトーマスに預けていた。
母から受け継いだ工具は真っ先に持ち出した。それから、母が作ったり、帝国から持参したりした魔道具も。
自分の身の回りのものはほとんど持ち出さなかった。
いや、持ち出したいと思うほどのものがなかったのだ。だって、大半のものはマルタの懐に入ってしまったのだから。
今日が、作戦決行の日である。
エリュシアは今日、この離宮を離れる。もう二度と、ここに戻ってくることはないだろう。
(お母様も、きっと許してくださるわよね)
ひとつ、心残りがあるとすれば。
母の墓は、この離宮の側にあるのだ。二度と墓参りはできないけれど――きっと、母は許してくれる。
それに、母から受け継いだ形見の品はいくつかある。
形見をどこかの墓地に埋葬させてもらって、そこにお参りするという手もあるだろう。