恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される

第13話 アルフレッドの不安と独占欲を垣間見る

 書庫で見つけたのは、クラレンス辺境伯領地に伝わる古い伝承をまとめたものだった。中を読もうにも、ずいぶん古い言語が使われていた。
 私とカウチに並んで座るアルフレッドは、渡した厚い本を興味深そうに見ながら「こんなものがあったのか」と呟いた。

「所々ページが欠けたり虫食いもしてるから、だいぶ古い本よね」
「そのようですね」

 頁を捲ったアルフレッドが眉をひそめた。

「アデルノアの文字もありますね……あの塔の話なのでしょう」
「これから、なにかわかるかしら?」
「そうですね……なにか情報があるといいのですが」 

 文章を指でなぞるアルフレッドは、しばらくすると顔を上げ「お預かりしてもいいですか?」と尋ねた。

「いいもなにも、元々、お屋敷にある書庫の本よ」

 変なことをいうんだからと笑っていると、驚いた顔をしたアルフレッドは数秒置いて、少しだけ照れたような表情を浮かべて「そうでした」と呟いた。

「旦那様なんだから、もっと堂々としないと。いいのですか、じゃなくて、預かるっていえばいいのよ」
「……そうはいいましても」
「それがアルフレッドらしいといえば、らしけどね」
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