恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される

第14話 夜の口づけに蕩ける

 その日の夜、アルフレッドは口づけの雨を降らせた。
 額、瞼、頬──息が苦しくなるほどの口づけが首筋や鎖骨に触れた時、吐息の熱さに背筋が震えた。

 声が聞きたい、名前を呼んでといわれても、恥ずかしさでそれどころではない。

 胸のふくらみに触れられただけで、頭の中は真っ白になった。
 今すぐ隠れたいくらい恥ずかしいのに、アルフレッドの熱さが心地い。時々ピリピリと肌が痺れて、どうしようもなく、もどかしさが込み上げる。

 どうして「したいところにキスをして」なんていったのだろう。

 でも、それ以外に私がアルフレッドへあげられる証なんて思い浮かばなかったの。
 婚姻届けへのサインとも、お揃いの指輪とも違う、アルフレッドと私しか知らない、二人だけの証をあげたかった。

 体温が上がっていく。
 鼓動も激しいし、どう息をしたらいいのかわからない。まるで溺れるようだった。

 今夜ついに、私はアルフレッドと──

 唇を重ねて目を閉じた私が、次に目を開けたのは清らかな朝日が差し込む朝だった。
 なんということでしょう。散々キスをされて頭が真っ白になって、ふわふわとしているうちに寝落ちてしまったみたい。
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