恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される

第17話 塔の魔核は悲しみを癒す

 簡素な地下道を前にして、足がすくんだ。

 クラレンスの屋敷にあった地下室の廊下も暗くて怖く感じたけど、この地下道はそれ以上に異質さが感じられる。
 壁には小さな明かりが等間隔で並べられ、行き先を示すようにゆらめいている。

 切り出された石のタイルが敷き詰められた道を進めば、足音がどこまで続くかわからない冷たい空間に響いた。
 この先に塔があるのよね。どれくらい歩けばいいのかしら。

 胸元で手を握りしめ、まっすぐ前を見据えて進んだ。

 どのくらい進んだだろうか。まだ街をでるほども進んでいないが、長老は足を止めて前を指差した。

「見えますかな?」

 目を凝らしてみると、暗闇にぼんやりと扉が見えた。

「……扉?」
「あの向こうは塔の中にございます」

 長老の静かな声に思わず「えっ!」と驚くと、静かな地下道に私の声がやけに大きく響き渡った。

「転移魔法か」
「左様にございます。あの扉を進めるのは一人のみ。引き返すことができぬ扉にございます」
「なるほど。本来は、生贄が進むために作られた道ということか」
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