恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される

第9話 収穫祭の準備で辺境伯夫人は大忙し?

 枯れた遺跡の調査は、調査隊が選抜されることになると聞かされ、いても立ってもいられずアルフレッドに詰め寄った。

「私も調査に連れていって!」
「ダメです。リリーは私の側を離れないという約束ですよね?」
「それは……」
「今回は私も屋敷に残るのですから、大人しくして頂きます」

 執務机に向かうアルフレッドが譲らないのはわかりきっていたけど。冒険譚のように外に出るのって簡単じゃないわね。

 ため息をこぼすと、羽根ペンを置いたアルフレッドが席を立った。

「リリー、ひと月後に収穫祭があると話しましたね」
「……ええ。それからここ一帯は冬支度が始まるんでしょう?」

 クラレンス辺境伯領は王都より遠く北に位置している。当然、冬は雪に閉ざされる。
 その前に秋の実りを感謝し、冬を平穏無事に乗り越えられるよう、山の神に祈りを捧げる祭りが古くから続いているそうだ。

 祭りの用意は領民だけじゃなく、貴族や騎士団、修道院、ありとあらゆる人たちが関わる。そう、私たちも例外じゃない。

「お祖母様が、リリーにも手伝って欲しいことがあるといっていましたよ」
「……辺境伯夫人として、役目を果たせってことよね」
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