恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される

第10話 メイドたちともすっかり仲良くなりました

 この日の夜、用意されたお風呂にはラベンダーの茎が浮かべられていた。それだけじゃなくて、茎と葉、零れ落ちた花の蕾を包んだ麻布の袋で、身体を丹念に磨かれた。

「ラベンダーにはリラックス効果もあるんですよ」
「……皆さんの魂胆が見え見てで、それどころじゃないです」

 ナイトドレスに着替えたのち、髪を梳かれながらながら、鏡に映るメイドたちの顔をちらりと窺った。誰もかれもが、にこにこうきうきとした様子だ。

 そこに悪意がないのはわかるけど、夜のことに注目されるのは、やっぱり気恥ずかしいもので。

 鏡から視線を逸らしてため息をついた。

「皆さん、あまりリリーステラ様を困らせないでくれませんか」

 声のする方を見ると、ハーブ水が入った水差しとグラスを持ってきたメイド──カーラが苦笑を見せた。彼女はメイドの中で一番私に年が近い。

「あら、カーラさん。そういいますけどね。領地の今後にも関わりますし」
「私たちだけでなく領民も、奥様のご懐妊を待ち望んでますのよ」

 ねえと頷き合うメイドたちは顔を見合う。そうして、誰かが「不幸続きでしたし」とぽろり呟いた。
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