男爵令嬢のマネをして「で〜んかっ♡」と侯爵令嬢が婚約者の王子に呼びかけた結果
「で〜んかっ♡」

 ローゼ男爵令嬢のお決まりの台詞、お決まりのポーズ。
 ぴょんと軽く飛び跳ねて、首をちょこんと軽く傾ける。そして、エドゥアルト王子の腕を強めにぎゅっと掴むのだ。
 剣技で鍛えられた硬質な腕に柔らかくてほんわりした腕が絡みつくと、王子の口元も自然と緩んだ。
 
「なんだい? ローゼ嬢?」
 
「えぇ〜っ? 呼んでみただけですよーぅ!」
 
「なんだなんだ。相変わらず変なやつだなぁ」
 
「うふふ」
 
 ……いつもの光景だ。

 
 この馬鹿馬鹿しい様子をシャルロッテ侯爵令嬢は呆れた様子で眺めていた。
 彼女の周囲の令嬢からは男爵令嬢を非難する声で満ちていたが、彼女自身は半ば諦念のようなどうでもいい気持ちで二人を見据えていた。

 ふと、彼女は首を傾げる。
 いつ頃だったか。
 エドゥアルト王子がローゼ男爵令嬢に入れ込むようになったのは。


< 1 / 9 >

この作品をシェア

pagetop