絶対零度の王子殿下は、訳アリ男装令嬢を愛して離さない
変化
アンリへの思いは、胸に秘めているだけで、そばにいて優しさに触れられるだけでいいと思っていたセレナだったが、ネックレスをもらった数日後からアンリの態度に変化が見られた。
どこか、よそよそしいのだ。
どこに行くにも一緒なのは変わらない。だけど、話しかけてもそっけないし、話しかけられることも少なくなったし、なにより態度が冷たく感じる。
初めは自分の気のせいだろうかと思ったセレナだったが、そうではないことがギャスパーによって決定づけられた。
「ねぇカイル。殿下となんかあった?」
いつもの選択授業の時間。アンリとジョシュアと別れた後に、ギャスパーが口を開いた。
「え……なん、で……」
「だって、殿下の様子変だもん」
「やっぱり⁉ ギャスパーもそう思う⁉」
セレナは思わずギャスパーの腕を掴んで言う。
「うん、だってさ、いつもならランチのときは我先にカイルの隣に座るのに、僕の隣座ってきたり、カイルがほかのクラスメイトと仲良く話してるのに放っておいたり……明らかにおかしいでしょ」
まさにセレナも思っていたことを指摘されて深く頷いて同意する。あの課外授業以降、マルセルとイザック含めほかのクラスメイトたちとも話す機会が増えたのはよかった。だから、あわよくばこれを機にアンリとも打ち解けてくれればと思ったのに、肝心のアンリは会話に入ってこないどころか近づこうともしなかった。
まるで「自分には関係ない」と拒絶している風にも見て取れた。
「それに、いつもキリっとしてるのに、最近心ここにあらず~って感じのこと多いから、喧嘩でもしたのかと思った。……まぁ、二人が喧嘩するところなんて想像もできないけど」
「それが……、僕にもわからないんだ。特になにかあったわけじゃないと思うんだけど……。もしかしたら殿下の気に障ることをしてしまったのかもしれない」
(あとは……迷惑かけてばかりだから嫌になったとか……?)
心当たりしかなくて、セレナは落ち込む。