絶対零度の王子殿下は、訳アリ男装令嬢を愛して離さない

魔法学校


「うそ……」

 掲示板に貼られた部屋割り表を見て、セレナの口からはそんな言葉が零れ落ちた。そんなまさか、誰か嘘だと言ってください。お願いします。
 願掛けしたところで名前が変わるわけもなく、セレナは愕然とする。

 なぜなら、相部屋の相手がこの国の王子殿下だったから。

 アンリ・オルレアン。

 確か、王位継承権第二位の王子だったはず。
 魔法学校の前に通う貴族の学校で習った記憶を手繰り寄せる。
 年齢が同じだな、とその時に思ったけれど、まさかこんな形で接点を持つことになるなんて思いもしなかった。

「おい見ろよこれ! 第二王子が相部屋になってる」

 同じく掲示板を見に来ていた生徒が隣で声を上げる。

「本当だ。相手は誰? カイル・デュカス……知ってるジョシュ?」
「あぁ~、深窓の令息だろ。俺も会ったことはないけど、ブロンドのロングヘアに女みたいな綺麗な顔してて……」

(あ……まずいかも)

 そう思ってこの場を立ち去るよりも早く、その生徒の顔がこちらへ向けられて目が合ってしまった。黒い髪を短く刈り上げた、ジョシュと呼ばれた青年が自分を凝視したまま固まるものだから、セレナは気まずくなって無言で目を逸らす。

「も、しかして……」
「えっ、君がデュカス伯爵家のカイル令息かい?」

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