離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました
5.五年越しの新婚生活

律と一緒に暮らしてみると、改めて彼の多忙さを知った。驚くほど家にいる時間が短いのだ。

優秀な医師揃いの脳外の中でも、神の手仕込みの腕のよさや経験値が桁違いのため、律は他の医師では難しいとされる手術を多く任されているらしい。

術後は急変に対応できるようにしておかなくてはならず、さらに同僚や後輩医師の指導にもあたっているため、帰宅時間は未依に比べるとかなり遅い時間になる。

『なかなか帰れなくて悪い。これじゃ今までと変わらないよな。もっと未依との時間を取りたいんだが……』

律は申し訳なさそうにしているけれど、不満に思ったことはない。未依自身が看護師のため医師の仕事に理解があることに加え、これまでと違ってここに帰ってきてくれるのだという安心感があるからだ。

せっかくアメリカで多くのことを学んできたのだから、それを総合医療センターに還元したいという律の気持ちも理解できる。

『もうしばらくすれば落ち着くはずだ。新しく承認された器具の研修も済んだし、脳外の医師はみんな優秀だから吸収も早い』

彼が持ち帰った知識や技術が、これから多くの患者を救うことになるのだ。改めて律を尊敬するし、誇らしく思う。

(それにしても、離婚しようと思ってたはずなのに、こうして一緒に暮らすことになるなんて)

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