離婚するはずが、凄腕脳外科医の執着愛に囚われました
6.アメリカ時代の女性の影
冬の足音が近づく十二月上旬。今朝まで夜勤だった未依は、ガッツリ朝ご飯を食べて昼過ぎまで眠ったあと、久しぶりに須藤の家を訪れていた。
「もう、もっと頻繁に帰ってきてくれたらいいのに。それに、家にストーカーが入ったって聞いて心配してたのよ」
「ごめんなさい」
口を尖らせて文句を言う富美に、未依は素直に頭を下げた。
両親を亡くした直後、血の繋がりのない未依を引き取り実の娘のように可愛がってくれた恩人であり、現在は義母でもある。
他人だと一線を引かず、こうして身内に対する叱り方をしてくれる富美が、未依は大好きだった。
「じゃあ、これからは律のマンションに住むってことね?」
「うん」
先日、未依の荷物をすべて律のマンションに移した。実家は以前のように賃貸として貸し出すか売却しようかと律と話している。
そう伝えると、富美は嬉しそうに表情を綻ばせた。