ハイヒールの魔法
4 爽やかな夜
高速道路を疾走するバイク。吹き抜けていく風が心地良い。こんな爽快感は初めてだった。
徹平の体の熱や、指先に感じる鍛えられた腹筋に、瀬名の心臓が早鐘のように打ち続けている。
どうして彼とバイクに乗ることになったのかは、いまだによくわからなかったが、初めての体験に心臓が激しく打ちつけていた。
バイクは高速を下り、一般道を進んでいく。そこから人通りの少ない暗がりの道に入ると、高台にある展望台で止まる。
スピードがゆっくりと落ち、バイクから降りた徹平は、瀬名のヘルメットを外した。
「着きましたよ」
髪がボサボサになった気がして慌てて直そうとするが、それよりも前面に広がる光景に瞳を輝かせる。
目の前には工場地帯の夜景に、瀬名は思わず感嘆の声を漏らした。見下ろすような夜景ではなく、同じ目線に広がる風景。美しく見せようとしているわけではない、働く現場の輝きに、心をギュッと掴まれた。
「うわぁ……キレイですね。まさか工場の夜景だとは思いませんでした」
そんな瀬名の様子を見ていた徹平が、嬉しそうに微笑んだ。
「機械の灯りもなかなかキレイですよね」
「えぇ、すごくキレイです」
バイクの前に立つ徹平は、座ったままの瀬名より目線が高く、彼の横顔を見上げた途端にドキッとした。
「本当は家に帰った時に、代わりの靴を貸そうか悩んだんです。でもそれをしたら、三木谷さんは帰ってしまう気がしたから、あえて言いませんでした」
瀬名の心臓が大きく高鳴り、息が苦しくなっていく。まるで恋愛漫画や恋愛小説を読んでいる時のようなドキドキに包まれていた。
徹平の体の熱や、指先に感じる鍛えられた腹筋に、瀬名の心臓が早鐘のように打ち続けている。
どうして彼とバイクに乗ることになったのかは、いまだによくわからなかったが、初めての体験に心臓が激しく打ちつけていた。
バイクは高速を下り、一般道を進んでいく。そこから人通りの少ない暗がりの道に入ると、高台にある展望台で止まる。
スピードがゆっくりと落ち、バイクから降りた徹平は、瀬名のヘルメットを外した。
「着きましたよ」
髪がボサボサになった気がして慌てて直そうとするが、それよりも前面に広がる光景に瞳を輝かせる。
目の前には工場地帯の夜景に、瀬名は思わず感嘆の声を漏らした。見下ろすような夜景ではなく、同じ目線に広がる風景。美しく見せようとしているわけではない、働く現場の輝きに、心をギュッと掴まれた。
「うわぁ……キレイですね。まさか工場の夜景だとは思いませんでした」
そんな瀬名の様子を見ていた徹平が、嬉しそうに微笑んだ。
「機械の灯りもなかなかキレイですよね」
「えぇ、すごくキレイです」
バイクの前に立つ徹平は、座ったままの瀬名より目線が高く、彼の横顔を見上げた途端にドキッとした。
「本当は家に帰った時に、代わりの靴を貸そうか悩んだんです。でもそれをしたら、三木谷さんは帰ってしまう気がしたから、あえて言いませんでした」
瀬名の心臓が大きく高鳴り、息が苦しくなっていく。まるで恋愛漫画や恋愛小説を読んでいる時のようなドキドキに包まれていた。