借金令嬢は異世界でカフェを開きます

第3話 救世主

 あれから三年。
 十日に一度の休日と年に二回領地に帰る以外、グレースは早朝から深夜まで働き続けた。
 定期的な休日を作ったのは主にモリーのため。グレース自身はその日を使って新商品の開発や市場調査などに費やした。定期的に領地に戻るのもそちらで仕事があるからだが、モリーには内緒だ。

(モリ―みたいに若い女の子が働きづめなんて、ぜったいダメからね)

 自分もまだ二十一歳ということを完全に棚に上げたグレースは、休日を楽しむモリーを通して青春を味わっていた。最近ボーイフレンドができたらしいモリーの様子に、つい頬が緩んでしまう。

「モリーの花嫁姿を見たら泣いてしまうかもしれないわ」
 微笑みながらも思わず本音を漏らしたグレースに、モリーは真っ赤になりながら「気が早いです」と手を振った。
「それに私は、グレース様がお嫁に行くまで絶対結婚なんてしませんよ?」
「あら、それは困ったわね。一日でも早く完済するための目標が増えたわ」

 頬に手を当て、こてんと首を傾げたグレースは、頭の中で残りの日数と借金の額を思い浮かべる。頑張っても頑張っても減らない数字に内心唇をかみしめても、けっして(おもて)には出さなかった。

(絶対モリーには、笑顔でお嫁にいってもらうんだから)
< 15 / 75 >

この作品をシェア

pagetop