借金令嬢は異世界でカフェを開きます

第9話 凛々しい護衛の女性たち

 グレースは周りの説得に負けて店を二日休んだが、三日目からは元気に働いた。
 医者が付けてくれた、ノリのように傷を貼り合わせる薬がよく効いたらしく、今では幾分かゆみが残る程度だ。「縫ったわけではないので禿げないわよ」と言われて笑い転げる。面白い女医さんだ。

 例の男たちは来ていない。常に人が複数いるから諦めたのかもしれない。護衛の女性たちは交代で来てくれるのだが、皆とても麗しい。

「グレース様、なんだか目の保養になりますね!」

 コソコソッとモリーがグレースに耳打ちするので全力で同意する。
 何者なのかはよく分からない。聞いても「レディ・グレースの護衛です」と笑顔でかわされてしまう。わかるのは、みなさん優秀で美しくて、こんな借金まみれの令嬢の護衛になんて宝の持ち腐れ過ぎだということだ。

(ほら、あれよ、あれ。美古都のママが好きだった、女性だけの劇団の人みたい!)

 こんな女性たちをぽんと寄こしてくれるリーアはいったい何者なのか。
 護衛の女性たちは、簡易ではあるが制服のようなものを着ているため、客の一部は女性たちの正体が分かっているようだ。しかし誰も何も教えてくれないので、いつも通り詮索するのはやめた。

(ここでは身分も立場も関係ないんだもの。私の作るものを食べてくれる人はみんな平等だわ)

 実際彼女らは、カフェのコーヒーや料理を心から楽しんでくれているらしい。
「実はここに来るのは、競争率が激しいのです」
 と、何人かがこっそり教えてくれた。

 最新のキッチンの中でも、グレースの魔法と相性がいいオーブンをフル活用して作った、シフォンケーキやカスタードプリンはすこぶる受けがよかった。どちらも代替クリームをホイップして添えているのだが、これがコーヒーにも合うと評判になっている。
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