借金令嬢は異世界でカフェを開きます
最終話 レディ・グレース
「ごめんなさい。無理です」
グレースは両手で顔を覆った。
伯爵令嬢としてなら、綺麗に笑って引き受けるところだ。ましてやそれが礼になるならなおさら。でも、自分の中の美古都が嫌だと言っている。一番素直な自分が、それは嫌だと叫んでいる。
普段なら絶対あり得ない感情がグレースの中を渦巻いて、どうしてもこらえきれなかった。
「やっぱり僕が相手では……」
「違います、そんなんじゃない!」
傷ついた声に驚いて思わず顔を上げて大声を出していた。彼の目は声と同じで傷ついていて、そのことにグレースは愕然とする。
「私は――オズワルドさんのことが好きなんです。すごく大好きだから無理。無理なの。誰かの代わりも、お礼の代わりも、好きな人と舞踏会に行ける理由がそんなことでは嫌なんです。わがままでごめんなさい。勝手に好きになってごめんなさい」
(他のことなら何でもする。でもこの気持ちにだけは、もう噓が付けない)
しかし、このせいで彼に二度と会えないかもしれない。
パニックになりかけたグレースの前で、オズワルドが椅子を倒すように立ち上がり、グレースのもとに駆け寄って抱きしめた。
「ごめん、グレース。僕は怖かったんです。何か理由を付けなければ断られてしまうと、卑怯にも思ってしまっていた。まさか君にそんな風に思われてるなんて夢にも思わなかったから」
体を離し、両手で頬を包まれる。
「本当に? レディ・グレース。僕を……」
自信なさげな彼の目をまっすぐに見て、グレースは「好きです」と告げた。
「私はオズワルドさんの名字さえ知りません。どんな立場の方なのかさえ知りません。でも好きです。あなたがいたから、私はつらいときも耐えることが出来たんです。あなたはずっと、私の心の癒やしで支えでした」
グレースは両手で顔を覆った。
伯爵令嬢としてなら、綺麗に笑って引き受けるところだ。ましてやそれが礼になるならなおさら。でも、自分の中の美古都が嫌だと言っている。一番素直な自分が、それは嫌だと叫んでいる。
普段なら絶対あり得ない感情がグレースの中を渦巻いて、どうしてもこらえきれなかった。
「やっぱり僕が相手では……」
「違います、そんなんじゃない!」
傷ついた声に驚いて思わず顔を上げて大声を出していた。彼の目は声と同じで傷ついていて、そのことにグレースは愕然とする。
「私は――オズワルドさんのことが好きなんです。すごく大好きだから無理。無理なの。誰かの代わりも、お礼の代わりも、好きな人と舞踏会に行ける理由がそんなことでは嫌なんです。わがままでごめんなさい。勝手に好きになってごめんなさい」
(他のことなら何でもする。でもこの気持ちにだけは、もう噓が付けない)
しかし、このせいで彼に二度と会えないかもしれない。
パニックになりかけたグレースの前で、オズワルドが椅子を倒すように立ち上がり、グレースのもとに駆け寄って抱きしめた。
「ごめん、グレース。僕は怖かったんです。何か理由を付けなければ断られてしまうと、卑怯にも思ってしまっていた。まさか君にそんな風に思われてるなんて夢にも思わなかったから」
体を離し、両手で頬を包まれる。
「本当に? レディ・グレース。僕を……」
自信なさげな彼の目をまっすぐに見て、グレースは「好きです」と告げた。
「私はオズワルドさんの名字さえ知りません。どんな立場の方なのかさえ知りません。でも好きです。あなたがいたから、私はつらいときも耐えることが出来たんです。あなたはずっと、私の心の癒やしで支えでした」