出がらし姫と蔑まれてきましたが、身代わりの嫁ぎ先で氷の帝王に溺愛されています。
第一章「出がらし姫、氷の帝王に出会う」
父王に夜突然呼び出された時、ラーラは一体何事かと思った。
今日も公務を母と姉の分までこなし、気が付くと家族と夕食を取る時間もなかった。もっとも、ラーラはいつも家族団らんの場にはいないので、誰も気にする者などいないのだが。
その家族の一人の父親が一体なんの用なのだろう。
「失礼します」
ラーラは国王の執務室のドアをノックし、「入れ」と言われて中に入った。
「……」
エオストレ王国代二十四代国王カールからは、香ばしい香辛料の香りがした。またラーラ抜きで家族での夕食を楽しんだのだろう。
ラーラは胸がギュッと押し潰される気がした。十七歳になってもこの寂しさと悲しさには慣れない。
幼い頃にはまだ両親も王太子である兄も優しかった気がする。だが、今は姉姫であるクラウディアしか愛そうとしない。
国王はラーラを頭から爪先までジロジロと見下ろした。唇を歪めて「相変わらず地味だな」と呟く。
「まあ、化粧をすれば見られないこともないか。野蛮国の皇帝が春の国の王女の美しさなど理解できるはずもない」
そして、机の上で手を組み、「フロスト帝国の皇帝に嫁げ」と一言で告げた。それは絶対的な命令であり、ラーラの意思を問うものではなかった。
「フロスト帝国へ?」
「そうだ。先日フロスト帝国より内密に使者が来た。春の女神の異能を持つ王女を嫁がせろとな」
今日も公務を母と姉の分までこなし、気が付くと家族と夕食を取る時間もなかった。もっとも、ラーラはいつも家族団らんの場にはいないので、誰も気にする者などいないのだが。
その家族の一人の父親が一体なんの用なのだろう。
「失礼します」
ラーラは国王の執務室のドアをノックし、「入れ」と言われて中に入った。
「……」
エオストレ王国代二十四代国王カールからは、香ばしい香辛料の香りがした。またラーラ抜きで家族での夕食を楽しんだのだろう。
ラーラは胸がギュッと押し潰される気がした。十七歳になってもこの寂しさと悲しさには慣れない。
幼い頃にはまだ両親も王太子である兄も優しかった気がする。だが、今は姉姫であるクラウディアしか愛そうとしない。
国王はラーラを頭から爪先までジロジロと見下ろした。唇を歪めて「相変わらず地味だな」と呟く。
「まあ、化粧をすれば見られないこともないか。野蛮国の皇帝が春の国の王女の美しさなど理解できるはずもない」
そして、机の上で手を組み、「フロスト帝国の皇帝に嫁げ」と一言で告げた。それは絶対的な命令であり、ラーラの意思を問うものではなかった。
「フロスト帝国へ?」
「そうだ。先日フロスト帝国より内密に使者が来た。春の女神の異能を持つ王女を嫁がせろとな」