白桜国夜話 死を願う龍帝は運命の乙女に出会う
◆第四章
龍帝の一日は辰の刻から始まり、白扇という役職の采女が「お目覚めの時刻でございます」と起こしに来る。
彼女に洗面を手伝ってもらい、剣獅の烈真の介助で入浴したあと、内殿医による診察を受けるのが日々の日課だ。
高天帝の脈を取って内衣の前を開いた老齢の彼は、眉を上げて言った。
「以前に比べ、幾分範囲が広がる速度が衰えたように感じます。何か理由にお心当たりはございますかな」
「いや。特に生活は変わっていないが」
高天帝はそう言いかけ、ふと一人の采女の顔を思い出して告げる。
「最近、とある采女と話すようになってな。もしかすると、それが気晴らしになっているかもしれない」
「さようでございましたか。〝病は気から〟と申しまして、気持ちの持ちようで病状が改善するということが実際にございます。陛下におかれましても、日々の楽しみを積極的に見つけられるとお身体によい影響があるかもしれません」
だが依然として頭痛や倦怠感があると伝えたところ、「くれぐれもご無理はなさらないよう」「どうしてもおつらい場合は、お薬を処方いたします」と告げ、内殿医が去っていく。
その後は膳奉の給仕で朝餉を取り、各省庁から奏上された文書に目を通したあと、朝議に臨んだ。
他国との交易に使っている絹織物や金銀、玉の生産量について話し合い、先日の洪水によって被害が出た地域の復興計画について検討する。
昼餉のあとは文書の決済をし、謁見の間で複数の人間と面会をしたり、閣僚と個別の会談を行った。
夕方の時間帯、皇極殿の私室に戻りながら、高天帝は朱華について考える。
(あの風峯の娘にしてはずいぶんと控えめな性格だと思っていたが、まさか養女だったとはな。本当は千早台の大路にあった金銀細工店の娘だと言っていた)
彼女に洗面を手伝ってもらい、剣獅の烈真の介助で入浴したあと、内殿医による診察を受けるのが日々の日課だ。
高天帝の脈を取って内衣の前を開いた老齢の彼は、眉を上げて言った。
「以前に比べ、幾分範囲が広がる速度が衰えたように感じます。何か理由にお心当たりはございますかな」
「いや。特に生活は変わっていないが」
高天帝はそう言いかけ、ふと一人の采女の顔を思い出して告げる。
「最近、とある采女と話すようになってな。もしかすると、それが気晴らしになっているかもしれない」
「さようでございましたか。〝病は気から〟と申しまして、気持ちの持ちようで病状が改善するということが実際にございます。陛下におかれましても、日々の楽しみを積極的に見つけられるとお身体によい影響があるかもしれません」
だが依然として頭痛や倦怠感があると伝えたところ、「くれぐれもご無理はなさらないよう」「どうしてもおつらい場合は、お薬を処方いたします」と告げ、内殿医が去っていく。
その後は膳奉の給仕で朝餉を取り、各省庁から奏上された文書に目を通したあと、朝議に臨んだ。
他国との交易に使っている絹織物や金銀、玉の生産量について話し合い、先日の洪水によって被害が出た地域の復興計画について検討する。
昼餉のあとは文書の決済をし、謁見の間で複数の人間と面会をしたり、閣僚と個別の会談を行った。
夕方の時間帯、皇極殿の私室に戻りながら、高天帝は朱華について考える。
(あの風峯の娘にしてはずいぶんと控えめな性格だと思っていたが、まさか養女だったとはな。本当は千早台の大路にあった金銀細工店の娘だと言っていた)