照れ屋な大崎くんは私のことが好きすぎる。
■こじらせた初恋 海斗サイド
■こじらせた初恋 海斗サイド


 俺は夜の住宅街でパトロール用の自転車をこぎながら、「あー……っ!」と声をもらした。

 激しい自己嫌悪が込み上げ、その記憶から逃げるようにペダルを踏む。

 再会の挨拶もせずにいきなり名前を呼ぶなんて、絶対引かれた。

『真帆ちゃん』と呼ばれたときの、きょとんとした彼女の表情を思い出すと、後悔が押し寄せ不器用な自分を殴りたくなる。

 普通、十六年ぶりに知人に再会したら、『久しぶり』とか『元気だった?』とか、そういう無難な会話から入るだろ。

 お互いに覚えているのを確認して、それから世間話をして、少しずつ距離を縮めるのが大人としての常識だ。

 それなのに。なんだ、俺のさっきの態度は……っ。

 自転車でのパトロール中に、立ち話をする男女を見つけた。女性の怯えた様子を見て声をかけると、その女性は真帆ちゃんだった。

 驚きのあまり思考が停止し、他人のような態度を取ってしまった自分を悔やむ。

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