虐げられた私が姉の策略で結婚させられたら、スパダリ夫に溺愛され人生大逆転しました。

16.連れ出してくれた王子様。

「私はあなたを害することはしないつもりです。私の名において誓わせて頂きます。正直、私は精神的に父の支配下にありました。しかし、正気に戻ることができアーデン侯爵邸で働く人々やあなたの家族に触れて、とても危害を加えて良いような方達ではないと認識したのです」

彼は私のことを疑っているのだろう。
彼には愛を求めるような目で私を見つめるのはやめて欲しい。
姉の手先ではない、遠い日の憧れのままの彼でいてくれた方がありがたい。

アカデミー時代、困った私を助けてくれたのはサイラスで、惨めで仕方ない舞踏会で連れ出してくれたのは第4皇子だ。

レナード様の存在はどちらの時もあって、本当は彼が私にとって一番気になっていて一番手を差し伸べてほしい存在だった。
何度も夢をみた、王子様のような彼が私を救い出してくれるシーンを。
だけれども、いつも彼は他の人たちに囲まれていて私には無関心で惨めになった。

「ここで働く方達は皆生き生きとしています。想像もできないでしょうが、カルマン公爵邸はいつもギスギスしていて、食事をする時も毒を盛られているのではないかと疑いながらでした。働いているメイドなど父の気分で弄ばれては金を渡されたり、舌を切り落とされて捨てられていました。私が家庭の恥部を明らかにしているのは、あなたの為なのですよ。狂った生育環境で育った女はまた狂っているのです。確かに私はこの天国のような侯爵邸での暮らしを気に入っております。でも、私がどういう人間かしっかり伝えておかないとフェアじゃない。本当に私をここに置いておいて良いのですか?私に触れようとしてくるのは、あなたが心の底では私を捨てたいと思っているからだと思いますよ」

本当にアーデン侯爵邸は私にとって理想郷だった。
自由に発言をしてよくて、好きなことができて食事も美味しい。
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