Love in Crisis

◆第9話 「罠の真相と、ふたりの連携」

建物の裏手に回った二人は、一瞬立ち止まり、互いの顔を見つめた。
まだ呼吸は荒く、心臓は胸の奥で激しく打っている。

「……ここからどうする？」
莉子が小声で問う。
奏叶は辺りを警戒しながら視線を巡らせる。

「まずは、獣医の正体を探る。誰かに助けを求める前に、俺たちで対処する」

莉子は頷き、彼の肩に手を添える。
「うん……奏叶と一緒なら、きっと大丈夫」

そのとき、遠くから低く冷たい声が響いた。

「おや……もう少しで完全勝利だったのにね」

影の中から、獣医が姿を現す。
白衣の下に隠された鋭い目。
「君たちにはここまで楽しませてもらった」

奏叶が前に出る。
「正体を話せ。なんで俺たちをここに……」

獣医は不敵に笑う。
「ふふ……お二人は、ある大切な存在を守るために動くでしょ？
その感情を利用したかっただけさ」

莉子は息をのむ。
「……あなたは、私たちの愛情を……利用したの？」

獣医は頷き、手に持った小型装置をちらつかせる。
「君たちの連携を試したかった。誰が誰を守るのか、どこまで信頼できるのか」

その瞬間、奏叶は莉子の手を強く握る。
「莉子……俺たち、絶対に負けない」

莉子も強く握り返す。
「うん、奏叶……一緒に乗り越える」

獣医はにやりと笑い、指を鳴らした。
周囲の壁がスライドし、通路が次々に変化する。
「さあ、次の試練だ——君たちの連携次第で生死が決まる」

二人は顔を見合わせ、息を合わせる。
「奏叶……指示通りに動こう」
「任せろ。莉子も俺の動きに集中して」

互いの呼吸を確認しながら、狭い通路を進む。
壁が突然せり出し、床が揺れる。
罠が容赦なく襲いかかる中、二人は自然と体を寄せ合い、手を握り続けた。

莉子が躓きそうになった瞬間、奏叶が咄嗟に腕を伸ばして抱き留める。
「大丈夫だ、俺がいる！」

心臓の奥が熱くなる。
——怖い。でも、奏叶がいれば、私は進める。

その先に、獣医が設置した最後の障害が現れた。
「ここを突破できれば……君たちの“絆”は証明される」

二人は互いにうなずき、息を整える。
目の前の障害は高く、危険だ。
しかし、二人は恐怖を力に変え、声をかけ合いながら一歩ずつ前に進む。

「莉子……手を離すな！」
「離さない……奏叶、信じてる！」

そして二人の動きが完全に連動した瞬間——
仕掛けは解除され、壁が開き、光が二人を包む。

「やった……！」
莉子は息を荒くしながら、奏叶を見上げる。
「奏叶……二人なら……乗り越えられるね」

奏叶も微笑む。
「そうだ、莉子……俺たちなら」

遠くで獣医が悔しそうに舌打ちをする。
だが、二人の絆と連携は、彼の仕掛けを完全に凌駕していた——

外の光が、二人を優しく照らす。
心臓の鼓動、息遣い、体温——
すべてが、互いへの信頼と愛で満たされる。

——そして、二人は次なる試練に向かう決意を固めた。