半年限定の花嫁だけど、本気で求められています

エピローグ

春の朝、やわらかな光がチャペルのステンドグラスを透かし、花びらのように床へ落ちた。
 白いバージンロードの先には、タキシードに身を包んだ怜司が立っている。
 凛として美しく、どこか緊張したように紗菜の姿を待っていた。

 扉が開くと、紗菜は深呼吸をして一歩を踏み出す。
 純白のドレスが光を集め、胸元のレースが震えるたび、幸せと実感が胸に広がった。

 (本当に……怜司さんのお嫁さんになるんだ)

 紗菜が近づくと、怜司はわずかに目を潤ませて微笑む。
 「綺麗だ、紗菜。……もう、離さない」
 その声だけで涙がこぼれそうになる。

 二人が向かい合い、誓いの言葉を交わす。
 怜司は紗菜の手を包みながら、低く囁く。

 「半年間の契約じゃなくて、これからは一生だ。
  俺の妻として、俺の隣にいてくれ」

 紗菜は頬を赤く染め、しっかりとうなずいた。
 「はい。怜司さんと、一緒に生きていきます」

 牧師が静かに告げる。
 「誓いのキスを」

 怜司は迷いなく紗菜の腰に手を添え、そっと唇を重ねた。
 優しく、深く、この先の人生を誓うように。

 祝福の拍手が広がり、チャペルに花びらが舞う。
 怜司は紗菜の手を取り、微笑んだ。

 「紗菜。これからが、俺たちの本当の物語だ」

 紗菜は涙の中で笑い返す。
 「……ずっと、一緒に歩いていきましょう」

 二人は寄り添いながらバージンロードを進む。
 もう“契約”ではなく、確かな愛で結ばれた夫婦として――。
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