【Web版】天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~
プロローグ
【プロローグ】
「許嫁、ね」という呟きは、こととん、ととん、という電車の走行音にかき消された。
帰宅ラッシュは過ぎているため、席は空いてはいないものの立っていれば余裕がある、そんな夜の電車内で、私はドアにもたれ、夜の都内の景色を見つめていた。
ガラスには私の顔が反射していた。きりっとした顔立ちだ。目は大きいと褒められるけれど、可愛いというより意思の強さを感じる。色白なところが、唯一女性らしいところかもしれないと自分では思う。すぐ美容室に行かないといけないのが面倒くさくて伸ばしがちなまっすぐの髪の毛は、低めの位置で結んでいる。
さっき会った女性とは大違いだ。小動物のように可愛らしかった、彼女。
――私の好きな人には、そんな許嫁がいるらしい。まあ、おかしくはないと思う。だって彼、香月宗司さんは都内でも有数の大病院の御曹司なのだから。
私がそんな彼の主治医になり、――偽物の婚約者となり。
気が付けば、愛情をも向けられるようになっていた。
でも。それは本当に愛情なのかなと、疑いたくないのに思ってしまう。
私は宗司さんにとって、物珍しかっただけなんじゃ?
正面切って言い返す、ものおじしない女にちょっと興味を抱いただけ、それを恋愛感情と勘違いしているだけ――ってことは、あり得るんじゃないだろうか。
だって、最初彼はこう言っていたのだ。『君を愛することなんて、百パーセントありえない』って。
「許嫁、ね」という呟きは、こととん、ととん、という電車の走行音にかき消された。
帰宅ラッシュは過ぎているため、席は空いてはいないものの立っていれば余裕がある、そんな夜の電車内で、私はドアにもたれ、夜の都内の景色を見つめていた。
ガラスには私の顔が反射していた。きりっとした顔立ちだ。目は大きいと褒められるけれど、可愛いというより意思の強さを感じる。色白なところが、唯一女性らしいところかもしれないと自分では思う。すぐ美容室に行かないといけないのが面倒くさくて伸ばしがちなまっすぐの髪の毛は、低めの位置で結んでいる。
さっき会った女性とは大違いだ。小動物のように可愛らしかった、彼女。
――私の好きな人には、そんな許嫁がいるらしい。まあ、おかしくはないと思う。だって彼、香月宗司さんは都内でも有数の大病院の御曹司なのだから。
私がそんな彼の主治医になり、――偽物の婚約者となり。
気が付けば、愛情をも向けられるようになっていた。
でも。それは本当に愛情なのかなと、疑いたくないのに思ってしまう。
私は宗司さんにとって、物珍しかっただけなんじゃ?
正面切って言い返す、ものおじしない女にちょっと興味を抱いただけ、それを恋愛感情と勘違いしているだけ――ってことは、あり得るんじゃないだろうか。
だって、最初彼はこう言っていたのだ。『君を愛することなんて、百パーセントありえない』って。
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