ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
《3》狸の罠にかかる
「懇親会、ですか?」
緊張を滲ませた問いかけへ、話を持ちかけてきた張本人である沓澤社長はにこやかに微笑んでみせた。
このところ、社長室への呼び出しが異様に多い。心臓の縮む思いがするからやめてほしいけれど、それを社長本人に直訴できるほどの度胸は持ち合わせていない。
しかも今日は単独で呼び出されたために、これまでとはまた異なる緊張感に襲われていた。上擦った呼吸を引きずったままの私に、社長は再びにっこりと口角を上げて話し始める。
「一応ね、〝創立記念祝賀会〟っていう名目ではあるようなんだが。先代から代替わりしてからはあまり堅苦しいものではなくなっていてね」
「は、はい」
「毎年、妻と一緒に招待されててね。今年もお声がかかったんだけど、遠い親戚に不幸があってねぇ、急遽そちらに向かうことになっちゃったんだよ」
親戚に不幸があったというわりに、社長の笑顔は崩れない。
嫌な予感しかしなかった。渇ききった喉を無理やりこくりと鳴らしたけれど、そこが潤った感覚はなく、それどころかぴりりと薄い痛みが走る。
緊張を滲ませた問いかけへ、話を持ちかけてきた張本人である沓澤社長はにこやかに微笑んでみせた。
このところ、社長室への呼び出しが異様に多い。心臓の縮む思いがするからやめてほしいけれど、それを社長本人に直訴できるほどの度胸は持ち合わせていない。
しかも今日は単独で呼び出されたために、これまでとはまた異なる緊張感に襲われていた。上擦った呼吸を引きずったままの私に、社長は再びにっこりと口角を上げて話し始める。
「一応ね、〝創立記念祝賀会〟っていう名目ではあるようなんだが。先代から代替わりしてからはあまり堅苦しいものではなくなっていてね」
「は、はい」
「毎年、妻と一緒に招待されててね。今年もお声がかかったんだけど、遠い親戚に不幸があってねぇ、急遽そちらに向かうことになっちゃったんだよ」
親戚に不幸があったというわりに、社長の笑顔は崩れない。
嫌な予感しかしなかった。渇ききった喉を無理やりこくりと鳴らしたけれど、そこが潤った感覚はなく、それどころかぴりりと薄い痛みが走る。