ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
《5》ブレイクダウン
沓澤課長が、職場で眼鏡をかけるようになった。
それでなくても近頃は彼を直視できずにいたのに、ますます難易度が上がってしまった。
木乃田店で鉢合わせした日にかけていた黒縁眼鏡とは違う、あれよりも縁が細い眼鏡だ。彼の端正な顔立ちに映えて、よく似合っている。就業時間中にそんなことばかり考えては我に返って、その都度自分をたしなめて……このところはその繰り返しだ。
出張から戻って以降、沓澤課長は、以前にも増して管理的な業務を数多く抱えるようになった。
部下のフォローや各々の残業管理、課内のみならず部内全体の課題の把握。そういうものに向き合う沓澤課長が遠い人になってしまった気がして、けれど次の瞬間には、最初から雲の上の人だったじゃないかと思う。
複雑に揺れる私の心境を無視し、彼は私に接する。
一時間もかからずに終わるだろう残業にも、ふたりで進めたほうが早いからと手を貸してくれる。〝業務量が増えてるから、今度上層部に事務スタッフの増員を申請してみる〟なんて、そんなことまで言い出す始末だ。
それでなくても近頃は彼を直視できずにいたのに、ますます難易度が上がってしまった。
木乃田店で鉢合わせした日にかけていた黒縁眼鏡とは違う、あれよりも縁が細い眼鏡だ。彼の端正な顔立ちに映えて、よく似合っている。就業時間中にそんなことばかり考えては我に返って、その都度自分をたしなめて……このところはその繰り返しだ。
出張から戻って以降、沓澤課長は、以前にも増して管理的な業務を数多く抱えるようになった。
部下のフォローや各々の残業管理、課内のみならず部内全体の課題の把握。そういうものに向き合う沓澤課長が遠い人になってしまった気がして、けれど次の瞬間には、最初から雲の上の人だったじゃないかと思う。
複雑に揺れる私の心境を無視し、彼は私に接する。
一時間もかからずに終わるだろう残業にも、ふたりで進めたほうが早いからと手を貸してくれる。〝業務量が増えてるから、今度上層部に事務スタッフの増員を申請してみる〟なんて、そんなことまで言い出す始末だ。