ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
第5章 恋するガール、駆け抜ける

《1》噂と嘘のその後

 柚子はちみつ飴の味がよく分からなくなった。

 そもそもそんなに美味しかっただろうか。実際、元々特別にこれを好んでいたわけではない。
 好きかと尋ねられれば好きだと答えるけれど、あくまでもコレクションのうちのひとつというだけだった。最初は。

 あれから一週間が経った。

 別れたらしいよ、という噂が広まるのも早かった。
 始まってもいない他人の恋愛話について、またもあれこれと憶測を交わしては興奮気味に噂を垂れ流す人たちを、馬鹿みたいだと思う。

 腫れ物に触れるような扱いは、思っていたより不愉快ではなかった。せいぜい鬱陶しい視線を向けられる程度だ。
 例の女性社員たちや陰口を叩いていた男性社員たちとは、顔を合わせる機会自体がない。向こうから避けているのか、あるいは陰で私を嘲笑っているのか……関心を寄せる気にすらなれない。どうでも良かった。
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