御曹司の深い愛が双子ママの心を甘く溶かす
コスモス畑で再び



 ***

 赤く染まった夕暮れの空を背景にピンクや白のコスモスが咲いている。見渡す限り一面に広がる景色は圧巻だ。

 地元では有名なコスモス畑であるこの場所は、私ーー関水(せきみず)有紗(ありさ)が子供の頃からお気に入りの場所でもある。

 この景色を一緒に見たかった人がいる。

 四年前に別れた恋人の顔が脳裏をよぎり、すぐに頭を振って現実に戻った。

 一瞬でも思い出したら前に進めなくなる。
 
 私と彼の関係はもうとっくに終わっているのだからいい加減忘れないといけないのに。

 ふぅと短く深呼吸をする。

 コスモスが風に揺れる穏やかな光景が目の前に広がり、少しずつ心が凪いでいく。

 日中はたくさんの人で賑わうが、午後五時を過ぎた今は人影もまばら。大好きなコスモスをこのままゆっくりと観賞できるかと思いきや、そうもいかず……。


「はるくーん。ひとりで遠くまで行ったらだめだよ」


 数メートル先を走る小さな背中に向かって叫ぶと、三歳の息子の晴輝(はるき)が足を止めて振り返る。


「ママー! はやくー」

「今行くよ。はるくんはそこで待っててね」


 コスモス畑に着いた途端、よほど嬉しかったのか晴輝が一目散に走り出した。

 好奇心旺盛で元気いっぱい、そして怖いもの知らずの晴輝は、おそらく私が声を掛けなければコスモス畑の中の道をひとりでどんどん走っていくだろう。


< 1 / 162 >

この作品をシェア

pagetop