エリート弁護士は秘密の双子ごと、妻を寵愛する
2・あなたと恋の始まり(過去編)
 ――カツコツ、コツコツコツ。

 街頭の明かりすらも心許ない一本道の路地を歩いている最中、私の背後からピッタリと追いかける足音が響く。

 始めのうちは駅から自宅までの帰路がまったく同じ人がこの近くに住んでいるんだと考え、気の所為だと思っていた。

 だけど……。

 休日まで同様の現象が起きるとなれば、さすがの私も「おかしいな?」と異変を察知する。

 毎日、毎日、毎日、毎日――。

 終わりのない迷路に迷い込んだかのように繰り返される。
 正体不明の人物が、あとを着いてくるだけならよかったのに――。
 そんな生活を半年間も続けていたら、「こいつは何をやっても大丈夫」だと判断されてしまったのかもしれない。

『21時55分の電車で、いつも帰宅しているよね?』

 不審な手紙がポストへ投函されるようになってしまった。

『今日は22時39分着。飲み会は楽しかった?』

 最初に見た時は驚いて、捨ててしまった。
 けれど、だんだんと私のことを「ずっと監視しています」と言わんばかりの内容に変化していくのを見たら、目を通すことすら億劫になる。
 二つ折りの手紙が投函されているのを見た瞬間、それをすぐさまジップロックの袋に入れるようになった。
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