【中編】激甘すぎる婚前同居。 〜訳アリ令嬢は染織家の盲愛に気づかない〜
第5話【お茶会】



「美宙ちゃん、じゃあ行こうか」

「はい!」


 穂貴さんの声に、胸が少し高鳴る。この家に住み始めてから、ようやく少しずつ慣れてきた気がする。
 毎朝目覚めると隣に彼がいて、毎晩眠る前に彼の優しい言葉が耳に残る。そんな日常が、別邸の孤独な日々を遠い記憶に変えていくようだ。

 でも、今日のように外出するとなると、まだ緊張が募る。穂貴さんのお母様からお茶会のお誘いを受けたのだ。穂貴さんはその間、会社に久しぶりに顔を出すらしい。心の中で、穂貴さんの仕事姿を想像して、少しわくわくする。でも、同時に不安がよぎる。お母様に気に入ってもらえるだろうか。私のような養女が、旧華族の家に溶け込めるのか……そんな疑問が、頭の片隅でくすぶる。

 穂貴さんは、一応“副社長”という肩書きがある。本人は肩書きはいらないと言ったらしいが、それを条件にと言われたため仕方なく副社長をしているらしい。それに、会社主催で個展をさせてもらってるからほっとくこともできないと、苦笑いしながら話していたのを思い出す。
 穂貴さんの横顔を見ると、優しい笑みが浮かんでいて、安心する。彼はいつも、私を大切に扱ってくれる。それが本当の愛なのか、それとも義務なのか、まだ信じきれなくて怖い。



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