これはもはや事故です!

誰かに話したい

翌日。
 磯崎が仕事に出た後の部屋には静けさが戻っていた。
 テーブルの上には、彼が置いていったメモ。

『無理はしない事。夕方には戻る』

 その短い一文を指でなぞってから、美羽はそっとスマホを手に取った。

(……誰かと話したい)

 自然と、名前が浮かぶのは、親友の優佳だった。

 発信ボタンを押すと、数コールで明るい声が返ってきた。

『美羽!? どうしたの、珍しい時間に』

「うん……今は、ちょっと一人で……優佳は、時間大丈夫?」

『今日は、午後番だから無問題。それより、足は? 大丈夫なの?』

 その一言に、胸が少し緩む。

「うん、だいぶ良くなってきた。まだ完全じゃないけど……歩ける」

『よかったぁ……』

 優佳の安堵が、声の端に滲んだ。

『で? ちょっと一人ってことは……まだ、磯崎さんって人のところに居るの?』

「……うん。今、仕事に行ってる」

 その答え方に、自分でも気づく。
 今、一緒に暮らしている人みたいな言い方だった。
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